🐿 こども経済新聞 Python入門SQL入門Git・GitHub声で覚える英語
段階
0 / 17 ステップ

まず、全体の地図

用語より先に、「データが運ばれる順番」をつかむ

ネットワーク学習でいちばん多い挫折は、「用語は覚えたけれど、つながらないときに何を見ればいいか分からない」という状態です。 これは、しくみをばらばらの単語として覚えてしまっているために起こります。 実務で本当に役立つのは、「自分の端末から相手のサーバーまで、データがどこを通り、各地点で誰が何を書き換えるか」を、 一本の線として説明できる力です。切り分けができる人は、この線を持っています。 このページは、その一本の線を下から順に積み上げる構成にしています。

段階ステップ身につくことできるようになること
基礎 STEP 0〜3 階層モデル、LAN、MACアドレス、IPアドレスとサブネット 自分の端末の設定画面を見て、意味が全部分かる
しくみ STEP 4〜8 ルーティング、NAT、TCP/UDP、DNS、DHCP、HTTPS 「ブラウザでURLを開くと何が起きるか」を最初から最後まで話せる
構築 STEP 9〜11 無線LAN、機器の役割と選定、回線、アドレス設計、冗長化 小規模オフィスのネットワークを図面から組み立てられる
運用 STEP 12〜13 切り分けの型、コマンド、監視、ログ、パケットキャプチャ 障害の連絡を受けて、原因の場所を30分で特定できる
セキュリティ STEP 14〜15 ファイアウォール、VPN、ゼロトラスト、クラウドのネットワーク 「守り方」を理由つきで説明し、設定に落とせる
実務 STEP 16 設計書、変更管理、資格、自宅ラボ、学び続け方 チームの一員として任せてもらえる

目安の期間は「1日30分〜1時間、週5日」を想定しています。すでにパソコンの設定に慣れている方は、もっと速く進みます。急ぐ必要はありません。手を動かした分だけ身につく分野です。

17ステップの目次

17ステップ

すべての段階 / 17件を表示中
STEP 0 基礎

ネットワークとは何か ── 学ぶ順番を決める

目安 1〜2日
このステップの到達点 ── 「ネットワーク」を、機器の名前ではなく役割の集まりとして説明できる。そして、これから学ぶ順番がなぜこの順番なのかを言える。ここができていれば、あとの16ステップは地図に地名を書き込んでいく作業になります。

ネットワークとは「相手まで届ける約束ごと」の集まり

ネットワークとは、ケーブルや無線でつながった機器の集まり……と説明されがちですが、それだと本質を外します。実際のネットワークは、「誰が、どんな形で、どの順番でデータを渡すか」という約束ごとの集まりです。この約束ごとをプロトコル(protocol)と呼びます。

郵便で考えると分かりやすくなります。手紙を送るとき、私たちは無意識に何段階もの約束ごとを使っています。封筒に住所を書く(宛先の約束)、ポストに入れる(受け渡しの約束)、郵便局が仕分けて運ぶ(中継の約束)、相手が封を開けて読む(中身の約束)。ネットワークもまったく同じで、役割ごとに別々の約束ごとが積み重なっています

いちばん大まかな全体像
  あなたのパソコン                                    見たいサーバー
  ┌──────────┐   ┌─────┐   ┌──────┐   ┌────────┐   ┌──────────┐
  │  ブラウザ │──▶│ 家の  │──▶│ 回線  │──▶│ インターネット │──▶│ Webサーバー │
  │          │◀──│ルーター│◀──│事業者 │◀──│  (無数の中継) │◀──│          │
  └──────────┘   └─────┘   └──────┘   └────────┘   └──────────┘
       ①            ②          ③            ④              ⑤

  ① 何を送るか決める      ② 家の中と外を橋渡しする    ③ 外まで運ぶ道
  ④ 世界中の中継を経由     ⑤ 受け取って返事を返す

学ぶ順番は「下から上」がいちばん速い

ネットワークには、物理的なケーブルから、目に見えるWebページまで、層(レイヤー)があります。学習は下の層から順に上へ登るのが、遠回りに見えていちばん速い道です。理由は単純で、上の層は下の層がすべて正常に動いている前提で成り立っているからです。

  • ケーブルが抜けていれば、どんなに正しいURLを打っても表示されない
  • IPアドレスが間違っていれば、DNSは動かない
  • DNSが引けなければ、HTTPSは始まらない

この依存関係は、そのまま障害のときの切り分け手順になります。つまり、学習の順番と、実務でのトラブル対応の順番は、まったく同じなのです。だから下から学ぶと、知識がそのまま仕事の手順になります。

このページの使い方

  1. 一周目は読むだけ。分からない用語があっても止まらず、最後まで読み通してください。
  2. 二周目でコマンドを打つ。各ステップの黒い枠は、あなたのパソコンでそのまま実行できます。
  3. 三周目で一問一答。各ステップの最後にある問いに、声に出して答えてください。答えられなければ、その節だけ読み返します。
コマンドを打つ場所 Windowsなら「コマンドプロンプト」または「PowerShell」(スタートボタンの横の検索窓に cmd と入力)、Macなら「ターミナル」(アプリケーション → ユーティリティ)を開きます。このページのコマンド例は、Windows用とMac/Linux用を分けて示しています。
最初の一歩:自分の端末の設定を見る
# Windows の場合
ipconfig /all

# Mac / Linux の場合
ifconfig
ip addr show
今の時点では

意味の分からない文字列がたくさん出てきます。それで正常です。STEP 3を終えるころには、この画面に出ている項目のほぼすべてを説明できるようになります。今は「あとで戻ってくる画面」として覚えておいてください。

この分野の「用語の多さ」との付き合い方

ネットワークは、英語の頭文字を取った略語(TCP、IP、DNS、DHCP、ARP……)が非常に多い分野です。ここで挫折する人がとても多いのですが、対処法ははっきりしています。略語を覚えようとせず、「何をする役目の人か」を一言で覚えることです。

略語読み方正式名称一言でいうと
IPアイピーInternet Protocol住所を決めて、宛先まで届ける係
TCPティーシーピーTransmission Control Protocol抜けや順番の乱れを直す、確実配達の係
UDPユーディーピーUser Datagram Protocol確認せずに投げっぱなしにする、速さ優先の係
DNSディーエヌエスDomain Name System名前を住所(IPアドレス)に変換する電話帳係
DHCPディーエイチシーピーDynamic Host Configuration Protocolつないだ端末に住所を自動で配る係
ARPアープAddress Resolution Protocol同じLAN内で、IPから機器の固有番号を調べる係
HTTPエイチティーティーピーHyperText Transfer ProtocolWebページの中身をやり取りする約束ごと
NATナットNetwork Address Translation家の中の住所を、外向けの住所に書き換える係
LANランLocal Area Network建物の中など、限られた範囲のネットワーク
WANワンWide Area Network拠点と拠点をつなぐ、広い範囲のネットワーク

この表は、ステップを進めるたびに戻ってきてください。10個の役目が言えるようになれば、ネットワークの会話の8割はついていけます。

ふりがな機能について このページは、難しい漢字や英語の略語にふりがなを付けています。画面上部の「ふりがな ON/OFF」ボタンでいつでも切り替えられ、設定は次に開いたときも引き継がれます。読み方を間違えて覚えると、会話で通じない・検索できないという実害が出ます。最初は必ずONで読んでください
一問一答
  1. プロトコルとは何ですか。一言で答えてください。
  2. ネットワークを「下の層から」学ぶとよいのはなぜですか。
  3. DNSは何をする役目ですか。
解答を見る
  1. 通信のときに双方が守る約束ごと(手順や形式の取り決め)。
  2. 上の層は下の層が正常に動くことを前提にしているため。学習順がそのまま障害の切り分け順になる。
  3. 名前(ドメイン名)を、通信に使う住所であるIPアドレスに変換する。
STEP 1 基礎

階層モデル ── OSI参照モデルとTCP/IPの4階層

目安 3日
このステップの到達点 ── 7つの層の名前と役割を順に言えて、「今の障害は第何層の問題か」を口に出せる。実務では、この一言が言えるだけで会話の質が変わります。「つながりません」ではなく「L1は生きていてL3で止まっています」と言えるようになります。

なぜ層に分けるのか

通信の仕事を、役割ごとに層に分けて考えるのがネットワークの基本発想です。分ける理由は3つあります。

  1. 入れ替えができる:ケーブルを無線に変えても、上の層(Webの表示など)はそのまま動く
  2. 分担できる:機器メーカーが違っても、層の境界の約束さえ守れば組み合わせられる
  3. 切り分けられる:不具合が起きたとき、どの層で止まっているかを順に確かめられる

3つ目が、実務でいちばん効きます。層は、そのまま点検の順番表です。

OSI参照モデル(7階層)

OSI参照モデル(オーエスアイさんしょうモデル)は、国際標準化機構が定めた7段階の考え方の枠組みです。実際の通信そのものというより、共通の言葉として使う物差しだと考えてください。下から順に第1層、第2層……と数えます。

名前役割単位代表例この層の機器
L7アプリケーション層アプリが直接使う約束ごとデータHTTP、DNS、SMTPロードバランサ(L7)、プロキシ
L6プレゼンテーション層文字コードや暗号化の形式データTLS、文字コード変換
L5セッション層会話の開始・維持・終了データセッション管理
L4トランスポート層どのアプリ宛か、確実に届けるかセグメントTCP、UDPファイアウォール、L4ロードバランサ
L3ネットワーク層離れた相手まで道を選ぶパケットIP、ICMPルーター、L3スイッチ
L2データリンク層同じ回線の中で隣まで渡すフレームEthernet、MACアドレススイッチ、ブリッジ
L1物理層電気信号や電波そのものビットケーブル、光、電波リピータ、ハブ、ケーブル
覚え方 下から「ぶ・で・ね・と・せ・ぷ・あ」(物理・データリンク・ネットワーク・トランスポート・セッション・プレゼンテーション・アプリケーション)。ただし丸暗記より、L1=線、L2=隣、L3=道、L4=相手のアプリ、L7=中身という5つを押さえるほうが実務では役立ちます。L5とL6は、現代のTCP/IPではL7にまとめて扱われることがほとんどです。

実際に使われているのはTCP/IPの4階層

OSIは物差しですが、いま世界中で実際に動いているのはTCP/IPモデルという4階層の体系です。両者の対応を頭に入れておくと、書籍や現場で話が食い違いません。

OSI 7階層と TCP/IP 4階層の対応
  OSI参照モデル                 TCP/IPモデル            具体例
  ┌─────────────┐
  │ L7 アプリケーション  │ ┐
  ├─────────────┤ │
  │ L6 プレゼンテーション │ ├──▶ アプリケーション層 ──▶ HTTP / HTTPS / DNS / SMTP
  ├─────────────┤ │
  │ L5 セッション      │ ┘
  ├─────────────┤
  │ L4 トランスポート   │ ───▶ トランスポート層  ──▶ TCP / UDP
  ├─────────────┤
  │ L3 ネットワーク     │ ───▶ インターネット層  ──▶ IP / ICMP / ARP
  ├─────────────┤
  │ L2 データリンク     │ ┐
  ├─────────────┤ ├──▶ ネットワーク    ──▶ Ethernet / Wi-Fi
  │ L1 物理          │ ┘    インターフェース層

カプセル化 ── 封筒を何重にもかぶせていく

データを送るとき、上の層から下の層へ渡されるたびに、その層の宛先情報(ヘッダー)が前に足されていきます。これをカプセル化と呼びます。受け取った側は、下から順に封を開けていきます(非カプセル化)。

送信するとき、封筒が増えていく
  L7  [          データ(HTTPの中身)        ]

  L4  [TCPヘッダー|       データ           ]
       └ 宛先ポート番号80 など

  L3  [IPヘッダー|TCPヘッダー|    データ        ]
       └ 宛先IPアドレス 93.184.x.x など

  L2  [Ethernetヘッダー|IPヘッダー|TCPヘッダー|データ|FCS]
       └ 宛先MACアドレス(次に渡す隣の機器)

  L1  0101110100101110101…(電気信号・光・電波)

ここで最重要のポイントを一つ。IPアドレスは最終目的地、MACアドレスは次に渡す隣の相手です。宅配便でいえば、IPアドレスは伝票の宛先住所、MACアドレスは「次にこのトラックへ積む」という積み替え指示にあたります。IPヘッダーの宛先は最後まで変わりませんが(NATを除く)、L2の宛先は中継のたびに書き換わります。この違いが分かると、ルーターとスイッチの役割の差が一気に腑に落ちます。

ここでつまずく人が多い 「IPアドレスがあるのに、なぜMACアドレスも要るのか」。答えは、担当する範囲が違うからです。IPは「東京都〇〇区〇〇1-2-3」という全国共通の宛先、MACは「この配送センターの3番レーンに載せる」という現場の指示です。どちらか一方では届きません。
層を意識して確かめてみる
# L1/L2 が生きているか(ケーブルとリンク状態)
# Windows
ipconfig
# Mac / Linux
ip link show

# L3 が生きているか(IPで相手まで届くか)
ping 8.8.8.8

# L7 が生きているか(名前で引いて中身を取れるか)
curl -I https://www.iana.org
読み取り方

ping 8.8.8.8 が通るのに ping www.iana.org が通らないなら、L3までは正常でDNS(名前解決)だけが壊れていると分かります。層で切ると、原因の範囲が一度に狭まります。これがSTEP 12でやる切り分けの原型です。

一問一答
  1. OSI参照モデルの第3層の名前と、その層の代表的なプロトコルを答えてください。
  2. IPアドレスとMACアドレスは、それぞれ何を指していますか。違いを説明してください。
  3. ルーターは第何層の機器で、スイッチは第何層の機器ですか。
解答を見る
  1. ネットワーク層。代表はIP(ほかにICMP)。
  2. IPアドレスは最終的な宛先。MACアドレスは、次に渡す隣の機器を指す。IPは途中で変わらず、MACは中継のたびに書き換わる。
  3. ルーターは第3層(ネットワーク層)、スイッチは第2層(データリンク層)。
STEP 2 基礎

LANの中身 ── Ethernet・MACアドレス・スイッチ

目安 4日
このステップの到達点 ── 同じ建物の中で、データがどの機器を通って隣の端末に届くかを説明できる。スイッチとハブの違い、VLANが何のためにあるかを、理由つきで言える。

LANとは「同じ範囲で直接話せる仲間の集まり」

LAN(ラン、Local Area Network)は、家や事務所など限られた範囲のネットワークです。対して、離れた拠点どうしを結ぶ広い範囲のものをWAN(ワン、Wide Area Network)と呼びます。会社でいえば、本社ビルの中がLAN、本社と支社をつなぐ回線がWANです。

LANの中では、ルーターを通らずに直接データをやり取りできます。この「直接話せる範囲」を、専門用語でブロードキャストドメインと呼びます。ここを押さえると、あとで出てくるVLANやサブネットの話が全部つながります。

Ethernet ── 有線LANの世界標準

Ethernet(イーサネット)は、有線LANでほぼ唯一使われている規格です。私たちが「LANケーブル」と呼んでいるものは、正しくはツイストペアケーブルといい、カテゴリ(Cat)という等級で速度が決まります。

ケーブル等級読み方最大速度最大距離使いどころ
Cat5eカテゴリファイブイー1Gbps100mいまも現役。一般的な事務所の端末用
Cat6カテゴリシックス1Gbps(10Gは55mまで)100m新規配線の標準的な選択
Cat6Aカテゴリシックスエー10Gbps100m無線APや基幹の配線。今後を考えるならこれ
Cat7・Cat8カテゴリセブン/エイト10〜40Gbps100m/30mデータセンター内。事務所ではまず不要
光ファイバーひかりファイバー10Gbps以上数百m〜数十km建物間、フロア間の基幹配線
現場でよくある判断 「とりあえずCat6Aにしておく」が無難です。ケーブルは一度壁の中に通すと引き直しが非常に高くつくため、機器より長い寿命を見込んで選びます。逆に、端末とスイッチをつなぐ短い線は、Cat5eでも実害はほとんどありません。

MACアドレス ── 機器に焼き付けられた固有の番号

MACアドレス(マックアドレス)は、ネットワーク機器の製造時に割り当てられた12桁の識別番号です。00:1A:2B:3C:4D:5E のように、2桁ずつ6組で表します。前半3組がメーカーを表す番号(OUI)、後半3組がそのメーカーの中の通し番号です。

IPアドレスが「引っ越すと変わる住所」なら、MACアドレスは「変わらないマイナンバー」に近い性質を持ちます。ただし、MACアドレスはLANの中でしか使われません。ルーターを一つ越えた瞬間に、新しいMACアドレスに書き換えられます。

自分のMACアドレスを見る
# Windows
getmac /v
ipconfig /all

# Mac
ifconfig en0 | grep ether

# Linux
ip link show
プライバシーとMACアドレス スマートフォンは近年、Wi-Fiに接続するとき本物とは違うMACアドレス(ランダムMAC)を使うのが既定になっています。店舗などで行動が追跡されるのを防ぐためです。そのため、会社でMACアドレスによる接続制限をかけていると、スマホがつながらないという問い合わせが起きます。実務でよく遭遇する事象なので、覚えておいてください。

ハブとスイッチ ── 何が違うのか

見た目はどちらも「LANケーブルの差込口がたくさんある箱」ですが、中の動きはまったく違います。この違いは、面接でもよく問われます。

ハブ(L1)とスイッチ(L2)の違い
  ■ リピータハブ(L1):来たものを全ポートにそのまま流す
                    ┌──── PC-B  ← 関係ないのに届く
      PC-A ───▶[ハブ]──── PC-C  ← 関係ないのに届く
                    └──── PC-D  ← 宛先だけが受け取り、他は捨てる
      → 無駄な通信が多い/同時に話すとぶつかる(コリジョン)

  ■ スイッチ(L2):宛先MACを見て、必要なポートにだけ送る
                    ┌──── PC-B
      PC-A ───▶[SW]      PC-C
                    └───▶ PC-D  ← 宛先のポートにだけ送られる
      → 無駄がない/同時に複数の会話ができる(全二重)

      スイッチの中にある「MACアドレステーブル」
      ┌──────┬──────────────┐
      │ ポート │ 学習したMACアドレス   │
      ├──────┼──────────────┤
      │  1   │ 00:1A:2B:3C:4D:5E  │ ← PC-A
      │  4   │ 00:1A:2B:99:88:77  │ ← PC-D
      └──────┴──────────────┘

スイッチは、通信を見ているだけで自動的にこの表を作ります。「ポート1から来たフレームの送信元MACはこれだった」と記録していくだけです。表にない宛先が来たときだけ、全ポートに流して(フラッディング)返事から学習します。設定なしで賢く動くのは、この学習のおかげです。

いま「ハブ」を新規に買う場面はほぼありません 家電量販店で「スイッチングハブ」として売られているものは、名前はハブでも中身はスイッチです。純粋なリピータハブは、いまや資格試験の中でしか見かけません。ただし用語として区別できることは求められます。

ブロードキャストと、なぜVLANが必要になるのか

ブロードキャストとは、同じLAN内の全員に向けた呼びかけです。「このIPアドレスの人、MACアドレスを教えてください」(ARP)のような場面で使われ、ネットワークが動くために欠かせません。

問題は、台数が増えるとこの呼びかけが増えすぎることです。200台の端末が同じLANにいると、全員の呼びかけが全員に届き、無駄な処理が増えます。さらに、経理部のパソコンと来客用の端末が同じ範囲にいるのは、セキュリティ上も好ましくありません。

そこで使うのがVLAN(ブイラン、Virtual LAN)です。1台のスイッチの中を、論理的に複数のLANに区切る機能です。物理的にスイッチを分けなくても、ポートごとにグループを割り当てられます。

VLANで、1台のスイッチを3つのLANとして使う
            ┌──────────── スイッチ 1台 ────────────┐
            │  VLAN 10(社員)  VLAN 20(来客)  VLAN 30(IP電話) │
            │  ┌───┬───┐   ┌───┬───┐   ┌───┬───┐  │
  ポート番号 →│  │ 1 │ 2 │   │ 5 │ 6 │   │ 9 │10 │  │
            │  └─┬─┴─┬─┘   └─┬─┴─┬─┘   └─┬─┴─┬─┘  │
            └────┼───┼───────┼───┼───────┼───┼────┘
                 PC   PC       来客  来客      電話  電話

  ・VLAN 10 と VLAN 20 の間は、そのままでは通信できない(=分離できる)
  ・お互いに通信させたいときは、必ずルーター/L3スイッチを経由させる
    → そこでファイアウォールのルールを書ける = 制御できる
VLANは「分ける」のが目的ではありません 本当の目的は「通すところを1か所にまとめて、そこで検査できるようにする」ことです。分けたうえで、通してよい通信だけをルーターやファイアウォールで許可します。この考え方は、STEP 14のセキュリティ設計にそのままつながります。
一問一答
  1. スイッチは、宛先をどうやって判断していますか。またその情報をどう手に入れますか。
  2. ブロードキャストとは何ですか。増えすぎると何が問題ですか。
  3. VLANを使う目的を、セキュリティの観点から説明してください。
解答を見る
  1. フレームの宛先MACアドレスを見て判断する。届いたフレームの送信元MACとポート番号を記録することで、MACアドレステーブルを自動的に学習する。
  2. 同じLAN内の全員に届く通信。増えると全端末が無駄な処理をし、性能が落ちる。
  3. 部署や用途ごとに通信範囲を分離し、VLANをまたぐ通信は必ずルーターやファイアウォールを通す形にして、許可・拒否を一か所で制御できるようにするため。
STEP 3 基礎

IPアドレスとサブネット ── ここが最大の山場

目安 1週間
このステップの到達点 ── 192.168.10.0/24 と書かれた表記を見て、使えるアドレスの範囲・台数・ブロードキャストアドレスを即答できる。ここが実務のいちばんの土台であり、初学者が最も時間をかけるべき場所です。焦らず、必ず紙に書いて計算してください。

IPアドレスは「32個の0と1」でできている

ふだん 192.168.1.10 と書いているIPアドレス(IPv4)は、コンピュータの中では32桁の2進数です。これを8桁ずつ4つに区切り、それぞれを10進数に直して点で結んだものが、見慣れたあの表記です。

10進数と2進数の対応
   192   .   168   .    1    .   10
  11000000.10101000.00000001.00001010
  └─8桁─┘└─8桁─┘└─8桁─┘└─8桁─┘   合計32桁(32ビット)

  8桁の各位が表す数字(ここだけ暗記する)
   128  64  32  16   8   4   2   1
    1   1   0   0   0   0   0   0   → 128+64 = 192
    1   0   1   0   1   0   0   0   → 128+32+8 = 168
ここだけは暗記 128・64・32・16・8・4・2・1。この8つの数字を覚えるだけで、2進数の変換はすべて足し算になります。逆向き(10進→2進)は、大きい数から順に「引けるか?」を試すだけです。200なら、128引ける(残72)→64引ける(残8)→32引けない→16引けない→8引ける(残0)で 11001000

ネットワーク部とホスト部

IPアドレスは、前半=どのネットワークか(ネットワーク部)と、後半=その中の何番目の機器か(ホスト部)の2つに分かれています。電話番号の市外局番と加入者番号、住所の「町名」と「番地」と同じ関係です。

どこまでが前半かを示すのがサブネットマスクです。255.255.255.0 のように書くほか、1が立っている桁数で /24 と書く方法(CIDR表記、サイダーひょうき)もあります。実務では圧倒的に /24 の書き方を使います。

192.168.10.50/24 を分解する
  IPアドレス     192.168.10.50
                 11000000.10101000.00001010.00110010

  サブネットマスク 255.255.255.0   (=/24)
                 11111111.11111111.11111111.00000000
                 └────── 1が24個 ─────┘└─ 0が8個 ─┘
                     ネットワーク部          ホスト部

  ネットワークアドレス  … ホスト部を全部0にしたもの
      192.168.10.0    ← 「このネットワークそのもの」を表す。端末には付けない

  ブロードキャストアドレス … ホスト部を全部1にしたもの
      192.168.10.255  ← 「全員宛」を表す。端末には付けない

  端末に使えるアドレス
      192.168.10.1 〜 192.168.10.254  の 254個

使える台数の計算

公式は一つだけです。使える台数 = 2のホスト部ビット数乗 − 2。マイナス2は、ネットワークアドレスとブロードキャストアドレスの分です。

CIDRサブネットマスクホスト部使える台数よくある使いどころ
/24255.255.255.08ビット254台いちばん標準的。事務所の1フロア、1部署
/25255.255.255.1287ビット126台/24を2つに割るとき
/26255.255.255.1926ビット62台小さな拠点、サーバー用の区画
/27255.255.255.2245ビット30台管理用、機器用の小区画
/28255.255.255.2404ビット14台プロバイダから割り当てられる固定IPなど
/30255.255.255.2522ビット2台ルーターとルーターを1対1で結ぶ区間
/31255.255.255.2541ビット2台(特例)ルーター間の点対点。RFC 3021で許可
/32255.255.255.2550ビット1台1つのアドレスだけを指す書き方
/16255.255.0.016ビット65,534台大きすぎるので実務ではまず分割する

この表は暗記の対象です。とくに /24=254台、/26=62台、/30=2台 の3つは、口をついて出るようにしてください。設計の会話でそのまま使います。

プライベートアドレスとグローバルアドレス

IPアドレスには、インターネットでそのまま使える住所(グローバルアドレス)と、組織の中だけで自由に使ってよい住所(プライベートアドレス)があります。プライベートアドレスの範囲は決められており、これは必ず覚えます。

範囲CIDRアドレス数どこで見るか
10.0.0.0 〜 10.255.255.25510.0.0.0/8約1678万大企業、クラウドのVPC
172.16.0.0 〜 172.31.255.255172.16.0.0/12約104万中規模の社内、Dockerの既定
192.168.0.0 〜 192.168.255.255192.168.0.0/1665,536家庭用ルーター、小規模事務所
169.254.0.0 〜 169.254.255.255169.254.0.0/16異常のサイン。DHCPから受け取れなかったとき自動で付く
127.0.0.0 〜 127.255.255.255127.0.0.0/8自分自身(ループバック)。127.0.0.1 が代表
169.254 で始まっていたら、それは故障です このアドレス(APIPA、エーピーアイピーエー)は、DHCPサーバーから返事がもらえなかった端末が、やむを得ず自分で付けた仮の番号です。これが出ていたら、ケーブル、スイッチ、DHCPサーバーのいずれかに問題があります。現場で ipconfig を打って169.254が見えたら、その時点で調査範囲が一気に絞れます。最重要の実務知識の一つです。

手を動かす ── サブネットの計算練習

計算を確かめるコマンド(Linux / Mac)
# ipcalc があれば、答え合わせに便利
ipcalc 192.168.10.50/26

# なければ Python でも確認できる(Windowsでも可)
python3 -c "import ipaddress; n=ipaddress.ip_network('192.168.10.0/26'); print(n.network_address, n.broadcast_address, n.num_addresses-2)"
実行結果の例
192.168.10.0 192.168.10.63 62
一問一答(必ず紙に書いて解いてください)
  1. 192.168.20.0/26 のネットワークについて、①使える最初のアドレス ②使える最後のアドレス ③ブロードキャストアドレス ④使える台数 を答えてください。
  2. 10.1.5.130/25 のネットワークアドレスは何ですか。
  3. 端末のIPアドレスが 169.254.13.200 になっていました。何が起きていると考えられますか。
  4. ルーター同士を結ぶ区間に /30 を使うのはなぜですか。
解答を見る
  1. ①192.168.20.1 ②192.168.20.62 ③192.168.20.63 ④62台(/26はホスト部6ビット、2⁶−2=62)。
  2. 10.1.5.128。/25は128区切りなので、130は128〜255の側に入る。
  3. DHCPサーバーからIPアドレスを受け取れず、APIPAで仮のアドレスが付いた状態。ケーブル・スイッチ・DHCPサーバーのいずれかに問題がある。
  4. 1対1の接続には2つのアドレスがあれば足り、無駄なアドレスを消費しないため。
STEP 4 しくみ

ルーティングとNAT ── 別のネットワークへ出ていく

目安 5日
このステップの到達点 ── ルーティングテーブルを読んで、「このパケットは次にどこへ行くか」を指でたどれる。デフォルトゲートウェイとNATの役割を、家庭のルーターを例に説明できる。

ルーターの仕事は「次に渡す先を選ぶ」だけ

ルーターは、受け取ったパケットの宛先IPアドレスを見て、自分が持っている表(ルーティングテーブル)と照らし合わせ、次に渡すべき隣のルーターを決めます。それだけです。目的地までの全経路を知っているわけではありません。

これは、道に迷ったときに交番で「次の角を右」と教えてもらうのに似ています。交番はゴールまでの全行程を教えてくれるわけではなく、次にどちらへ進むべきかだけを教えます。それを各交差点で繰り返すと、いつか目的地に着きます。インターネットは、この仕組みで世界中がつながっています。

パケットが中継されていく様子(宛先IPは変わらない)
  PC ────▶ ルーターA ────▶ ルーターB ────▶ ルーターC ────▶ サーバー
  192.168.1.10                                             203.0.113.5

  宛先IP     203.0.113.5   203.0.113.5   203.0.113.5   203.0.113.5
              ↑ 最後まで変わらない(NATがある場合を除く)

  宛先MAC    ルーターAの   ルーターBの   ルーターCの   サーバーの
             MACアドレス   MACアドレス   MACアドレス   MACアドレス
              ↑ 1区間ごとに毎回書き換わる

  TTL         64  ──▶  63  ──▶  62  ──▶  61
              ↑ ルーターを1つ越えるたびに1減る。0になると破棄される
                (ループしたパケットが永久に回り続けるのを防ぐ仕組み)

ルーティングテーブルを読む

あなたのパソコンにも、小さなルーティングテーブルがあります。まず自分のものを見てみましょう。

ルーティングテーブルを表示する
# Windows
route print -4

# Mac
netstat -rn -f inet

# Linux
ip route show
実行結果の例(Linux)と読み方
default via 192.168.1.1 dev eth0 proto dhcp metric 100
192.168.1.0/24 dev eth0 proto kernel scope link src 192.168.1.10
  • 2行目:宛先が 192.168.1.0/24 の範囲なら、ルーターに頼らず eth0から直接届ける(同じLAN内だから)
  • 1行目:それ以外のすべての宛先(default、=0.0.0.0/0)は、192.168.1.1に丸投げする

この「それ以外は全部ここへ」という投げ先をデフォルトゲートウェイと呼びます。家庭では、これがWi-Fiルーターのアドレスです。設定がおかしくてインターネットだけ出られないという障害の大半は、ここが間違っているか、届かなくなっています。

ロンゲストマッチ(最長一致) 複数の行に当てはまるときは、より細かく指定されている行が勝ちます10.0.0.0/810.1.2.0/24 の両方に当てはまるなら、後者(数字が大きい=範囲が狭い)が選ばれます。「より詳しい道案内を優先する」と覚えてください。これはルーティングの絶対原則です。

経路の決め方 ── 静的と動的

方式読み方やり方長所短所使う場面
スタティックルーティング人が1行ずつ手で書く予測できる。軽い台数が増えると管理しきれない。障害時に自動で迂回しない小規模、拠点が数か所
RIPリップ通過するルーター数の少なさで選ぶ単純15台までしか数えられない。遅いいまはほぼ使われない(学習用)
OSPFオーエスピーエフ回線の速さを点数化して最短を選ぶ速く収束する。組織内の標準設計に知識が要る企業内の複数拠点
BGPビージーピー組織どうしの方針で選ぶインターネットそのものを支える難しい。事故の影響が大きいプロバイダ間、大規模、クラウド接続

初学者がまず理解すべきはスタティック、次にOSPFです。BGPは「インターネット全体の経路交換に使われている」と知っていれば、当面は十分です。

NAT ── 家の中の住所を、外向けの住所に書き換える

プライベートアドレスは、インターネットにそのままでは出られません。そこで、家庭や会社のルーターは、外へ出ていくパケットの送信元アドレスを、自分が持つグローバルアドレスに書き換えます。これがNAT(ナット)です。

ただし、家の中に10台あるとき、全部を同じグローバルアドレスに書き換えたら、返事がどの端末宛か分からなくなります。そこで、ポート番号も一緒に書き換えて区別します。これをNAPT(ナプト)、あるいはIPマスカレードと呼びます。家庭用ルーターがやっているのは、正確にはこちらです。

NAPTの変換表(ルーターの中にある)
  家の中                    ルーター                     インターネット
  ┌──────────────┐                              ┌──────────┐
  │PC-A 192.168.1.10 │──┐                          │  Webサーバー │
  │PC-B 192.168.1.11 │──┼─▶[変換]─── 203.0.113.7 ─▶│ 93.184.x.x │
  │スマホ192.168.1.12 │──┘                          └──────────┘
  └──────────────┘

  ルーターが持つ変換表
  ┌──────────────────┬──────────────────┐
  │ 内側(送信元)        │ 外向けに書き換えた値   │
  ├──────────────────┼──────────────────┤
  │ 192.168.1.10 : 51000 │ 203.0.113.7 : 40001 │
  │ 192.168.1.11 : 49820 │ 203.0.113.7 : 40002 │
  │ 192.168.1.12 : 52310 │ 203.0.113.7 : 40003 │
  └──────────────────┴──────────────────┘
  返事が 203.0.113.7:40002 宛で戻ってきたら、192.168.1.11 に返せばよい
NATがあるおかげで起きていること
・IPv4アドレスの枯渇が先延ばしにされている(1つのグローバルアドレスを大勢で共有できる)
・外から中の端末に、勝手には接続できない(結果的に簡易な防御になっている)
・逆に、外部にサーバーを公開したいときは、ポート開放(ポートフォワーディング)の設定が別途必要になる
・オンライン対戦ゲームやビデオ会議で不具合が出るときは、このNATの挙動が原因のことが多い
NATはセキュリティ機能ではありません 「NATがあるから安全」という説明を見かけますが、正確ではありません。外から始まる接続が届きにくいのは副作用であり、内側から接続を始めてしまえば通信は成立します。マルウェアは内側から外へ接続するため、NATでは防げません。守りは、STEP 14で学ぶファイアウォールの役目です。
一問一答
  1. デフォルトゲートウェイとは何ですか。
  2. ルーティングテーブルに複数の行が当てはまるとき、どれが選ばれますか。
  3. NAPTが、IPアドレスに加えてポート番号も書き換えるのはなぜですか。
  4. TTLは何のためにありますか。
解答を見る
  1. ルーティングテーブルに一致する行がない宛先について、まとめて転送を任せる先のルーター。
  2. ロンゲストマッチにより、いちばん範囲の狭い(プレフィックス長が長い)行が選ばれる。
  3. 複数の端末が同じグローバルアドレスを共有するため、返ってきたパケットをどの端末に戻すか区別する必要があるから。
  4. ルーターを越えるたびに1ずつ減り、0になるとパケットが破棄される。経路がループしたときに、パケットが永久に回り続けるのを防ぐため。
STEP 5 しくみ

TCPとUDP、ポート番号 ── どのアプリに渡すか

目安 4日
このステップの到達点 ── TCPとUDPの違いを「なぜ使い分けるのか」から説明でき、主要なポート番号を空で言える。netstat の出力を読んで、いま何が通信しているか分かる。

ポート番号 ── 建物の中の部屋番号

IPアドレスで「どの機器か」までは決まりますが、1台のサーバーの中ではWebも、メールも、ファイル共有も同時に動いています。そのどれ宛なのかを示すのがポート番号です。IPアドレスがビルの住所なら、ポート番号は部屋番号にあたります。

0〜65535の番号があり、用途で3つに分かれます。

  • 0〜1023:ウェルノウンポート。主要なサービス用に予約されている(要管理者権限)
  • 1024〜49151:登録済みポート。製品やサービスが登録して使う
  • 49152〜65535:動的ポート。接続するたびに、送信元として自動で割り当てられる
番号サービス読み方TCP/UDP覚えるべき度
20 / 21FTP(データ/制御)エフティーピーTCP★★
22SSH(安全な遠隔操作)エスエスエイチTCP★★★
23Telnet(平文の遠隔操作)テルネットTCP★★
25SMTP(メール送信)エスエムティーピーTCP★★★
53DNS(名前解決)ディーエヌエスUDPとTCP★★★
67 / 68DHCP(サーバー/クライアント)ディーエイチシーピーUDP★★★
80HTTPエイチティーティーピーTCP★★★
110POP3(メール受信)ポップスリーTCP★★
123NTP(時刻合わせ)エヌティーピーUDP★★
143IMAP(メール受信)アイマップTCP★★
161 / 162SNMP(機器監視)エスエヌエムピーUDP★★
389LDAP(ディレクトリ)エルダップTCP★★
443HTTPSエイチティーティーピーエスTCP★★★
445SMB(Windowsファイル共有)エスエムビーTCP★★★
3389RDP(リモートデスクトップ)アールディーピーTCP★★★

★3つは必ず覚えてください。ファイアウォールの設定でも、障害の切り分けでも、毎日のように出てきます。

TCP ── 確実に届ける、几帳面な運び屋

TCPは、相手に確実に、順番どおりに届けることを保証します。そのために、送る前に必ずあいさつ(コネクション確立)をします。これが有名な3ウェイハンドシェイクです。

3ウェイハンドシェイクと切断
  クライアント                                    サーバー
      │                                            │
      │──────  ① SYN(つないでいい?)  ──────▶│
      │                                            │
      │◀───  ② SYN + ACK(いいよ、そちらは?) ───│
      │                                            │
      │──────  ③ ACK(了解、始めます)  ─────▶│
      │                                            │
      │══════  ここからデータのやり取り  ══════│
      │                                            │
      │──────  ④ FIN(終わります)  ────────▶│
      │◀─────  ⑤ ACK ─────────────────│
      │◀─────  ⑥ FIN ─────────────────│
      │──────  ⑦ ACK  ───────────────▶│

  SYN … 接続要求   ACK … 確認応答   FIN … 切断要求   RST … 強制切断

TCPは、届いたことの確認(ACK)が返らなければ自動で再送し、順番が入れ替わったら並べ直し、混雑してきたら送る速さを自動で落とします(輻輳制御、ふくそうせいぎょ)。とても賢い代わりに、やり取りが増えるぶん、わずかに遅くなります。

UDP ── 確認しない、速さ優先の運び屋

UDPは、あいさつも確認もせず、投げっぱなしにします。届かなくても再送しません。乱暴に見えますが、これが正解になる場面があります。

比べる点TCPUDP
接続の確立する(3ウェイハンドシェイク)しない
届いたか確認する(ACK)。届かなければ再送しない
順番の保証するしない
速さやや遅い速い
ヘッダーの大きさ20バイト以上8バイト
代表的な用途Web、メール、ファイル転送、SSHDNS、DHCP、NTP、音声通話、動画配信、オンラインゲーム
使い分けの理由を一言で後から直せるならTCP、後から直しても意味がないならUDP」。ファイルは1バイトでも欠けたら壊れるので再送する価値があります。一方、ビデオ会議の音声は、0.5秒前の音を今さら送り直しても会話の邪魔になるだけです。だから捨てて先へ進みます。

手を動かす ── いま何が通信しているか見る

通信中のコネクションを一覧する
# Windows(-b はプロセス名も表示。管理者権限が必要)
netstat -ano
netstat -anob

# Mac
netstat -an -p tcp
lsof -i -P | grep LISTEN

# Linux(ss が現代の標準。netstat の後継)
ss -tuln
ss -tanp
実行結果の例と読み方
Proto  ローカルアドレス      外部アドレス          状態
TCP    192.168.1.10:52344   93.184.216.34:443    ESTABLISHED
TCP    0.0.0.0:445          0.0.0.0:0            LISTENING
  • ESTABLISHED:いま通信が成立している。:443 なのでHTTPS通信
  • LISTENING:接続を待ち受けている状態。0.0.0.0:445すべてのネットワークから445番の接続を受け付けているという意味で、セキュリティ上の点検対象
  • TIME_WAIT:切断直後の余韻。大量にあるなら、短時間に大量の接続が発生している
一問一答
  1. 3ウェイハンドシェイクの3つのやり取りを、順に答えてください。
  2. DNSがふだんUDPを使うのはなぜですか。またTCPを使う場面はありますか。
  3. HTTPS、SSH、SMBのポート番号をそれぞれ答えてください。
  4. netstat の出力で LISTENING と表示される行は、何を意味しますか。
解答を見る
  1. SYN → SYN+ACK → ACK。
  2. 問い合わせと応答が1往復で終わる小さな通信であり、接続確立の手間をかけないほうが速いため。応答が大きい場合やゾーン転送ではTCPを使う。
  3. HTTPS=443、SSH=22、SMB=445。
  4. そのポートで外部からの接続を待ち受けている(サービスが動いている)ことを意味する。
STEP 6 しくみ

DNS ── 名前を住所に変える、世界最大の電話帳

目安 4日
このステップの到達点 ── 名前解決の流れを、ルートサーバーから順にたどって説明できる。主要なレコードの種類を使い分けられ、DNSが原因の障害を切り分けられる。実務の障害の体感で2〜3割はDNS絡みです。

なぜDNSが必要なのか

通信に実際に使われるのはIPアドレスですが、人間が 93.184.215.14 を覚えるのは無理があります。そこで、www.example.com のような名前(ドメイン名)を、IPアドレスに変換する仕組みが必要になります。これがDNSです。

DNSは、1台の巨大なサーバーではなく、世界中に分散した階層構造で動いています。この分散こそがDNSの設計思想であり、ここを理解すると障害の切り分け方が見えてきます。

名前解決の流れ(www.example.com を引くとき)
  ①  あなたのPC
       │「www.example.com のIPを教えて」
       ▼
  ②  DNSキャッシュサーバー(プロバイダや社内にある「聞き役」)
       │  ※ここに答えが残っていれば、ここで即返す(キャッシュ)
       │
       ├─③─▶ ルートサーバー(世界に13系統)
       │    ◀── 「.com のことは、このサーバーに聞いて」
       │
       ├─④─▶ .com を管理するサーバー(TLDサーバー)
       │    ◀── 「example.com のことは、このサーバーに聞いて」
       │
       └─⑤─▶ example.com の権威サーバー
            ◀── 「www.example.com は 93.184.215.14 です」(これが正解)
       │
       ▼
  ⑥  PCに答えを返す + 一定時間(TTL)自分でも覚えておく

  ・②が答えを探しに行く動きを「再帰問い合わせ」
  ・③④⑤の各サーバーが「次はここ」と教える動きを「反復問い合わせ」という
この図の意味するところ 「DNSが遅い」と感じるとき、原因は②のキャッシュサーバーであることがほとんどです。⑤まで毎回聞きに行くのは最初の1回だけで、あとはTTLの間キャッシュから返るためです。だから切り分けでは、まず参照先のDNSサーバーを別のものに変えて試すのが定石になります。

レコードの種類 ── 何を答えるかの型

種類読み方何を返すか使う場面
AエーIPv4アドレスいちばん基本。Webサーバーの住所
AAAAクアッドエーIPv6アドレスIPv6対応のサーバー
CNAMEシーネーム別名(別の名前へ転送)www を本体名に寄せる、外部サービスの利用
MXエムエックスメールサーバーの名前と優先度メールの宛先を決める。メールが届かない障害の1番目の確認先
NSエヌエスそのドメインを管理する権威サーバー移管、委任
TXTテキスト任意の文字列SPF・DKIM・DMARC(迷惑メール対策)、所有権の証明
PTRピーティーアールIPアドレス → 名前(逆引き)メールサーバーの信頼性確認、ログの読みやすさ
SOAエスオーエーそのゾーンの管理情報更新間隔やTTLの既定値

手を動かす ── DNSを引いてみる

名前解決を手動で確かめる
# Windows / Mac / Linux 共通
nslookup www.iana.org

# 参照するDNSサーバーを指定して引く(切り分けの定番)
nslookup www.iana.org 8.8.8.8

# レコードの種類を指定する
nslookup -type=MX iana.org

# Mac / Linux なら dig のほうが情報量が多い
dig www.iana.org
dig iana.org MX +short
dig @1.1.1.1 www.iana.org       # 参照先を指定
dig www.iana.org +trace          # ルートから順にたどる(学習に最適)
出力で見るところ

ANSWER SECTION に答えがあるか、statusNOERROR か(NXDOMAIN なら名前が存在しない)、TTL が何秒か。この3点を押さえれば、DNS障害の8割は切り分けられます。

キャッシュの確認と消去
# Windows
ipconfig /displaydns
ipconfig /flushdns

# Mac
sudo dscacheutil -flushcache
sudo killall -HUP mDNSResponder

# Linux(systemd-resolved の場合)
resolvectl statistics
sudo resolvectl flush-caches

TTLと、切り替え作業の落とし穴

TTL(ティーティーエル)は、「この答えを何秒間覚えておいてよいか」という有効期限です。TTLが3600なら、1時間は世界中のキャッシュサーバーが古い答えを返し続けます。

実務で必ず出会う場面 サーバーを引っ越してIPアドレスを変えるとき、作業の数日前にTTLを短く(300秒などに)しておくのが鉄則です。これを忘れると、切り替え後も何時間も古いサーバーにアクセスが流れ続け、「一部の人だけ繋がらない」という厄介な状態になります。切り替えが終わって安定したら、TTLを元に戻します。この段取りを知っているかどうかで、実務での信頼が変わります
hostsファイル ── DNSより先に見られる場所 パソコンには、DNSに聞く前に参照される hosts というファイルがあります(Windows: C:\Windows\System32\drivers\etc\hosts、Mac/Linux: /etc/hosts)。テストで一時的に特定のサーバーへ向けたいときに便利ですが、書いたまま消し忘れると原因不明の障害になります。「1台だけ挙動が違う」ときは、まずここを疑ってください。
一問一答
  1. 再帰問い合わせと反復問い合わせの違いを説明してください。
  2. メールが届かないという相談を受けました。DNS上でまず確認すべきレコードは何ですか。
  3. サーバー移転の前にTTLを短くしておくのはなぜですか。
  4. nslookup の結果が NXDOMAIN でした。何を意味しますか。
解答を見る
  1. 再帰問い合わせは、キャッシュサーバーに「答えそのもの」を求める問い合わせ。反復問い合わせは、キャッシュサーバーが各階層のサーバーに「次はどこに聞けばよいか」を順に尋ねていく動き。
  2. MXレコード(あわせてSPF/DKIM/DMARCのTXTレコードも確認する)。
  3. 世界中のキャッシュに古いIPアドレスが残る時間を短くし、切り替え直後の混乱を最小限にするため。
  4. その名前が存在しない(登録されていない)こと。綴り間違いか、レコード未作成、あるいはドメインの失効を疑う。
STEP 7 しくみ

DHCP・ARP・ICMP ── 端末がつながるまでの実際

目安 4日
このステップの到達点 ── パソコンをLANケーブルに挿してからインターネットが見えるまでに何が自動で起きているかを、順を追って説明できる。ここが分かると、「つながらない」の原因がどこにあるか見当がつくようになります。

DHCP ── 住所を自動で配る

端末をネットワークにつなぐと、IPアドレス・サブネットマスク・デフォルトゲートウェイ・DNSサーバーが自動で設定されます。これを配っているのがDHCPサーバーです。家庭ではルーターが、会社ではサーバーや上位のスイッチが担当します。

やり取りは4段階で、頭文字を取って「DORA(ドラ)」と覚えます。

DHCPの4段階(DORA)
  クライアント(まだIPを持っていない)              DHCPサーバー
      │                                              │
      │─① DISCOVER ─────────────────────▶│
      │   「誰かIPアドレスをください」(全員へ叫ぶ=ブロードキャスト)
      │                                              │
      │◀─② OFFER ──────────────────────│
      │   「192.168.1.50 でどうですか」(候補の提示)
      │                                              │
      │─③ REQUEST ──────────────────────▶│
      │   「それをください」(複数サーバーがいる場合の選択も兼ねる)
      │                                              │
      │◀─④ ACK ────────────────────────│
      │   「どうぞ。有効期限は8日間です」(リース期間)
      │
      └─▶ IPアドレス・マスク・GW・DNS が設定され、通信できるようになる
DHCPの再取得(つながらないときの初手)
# Windows:いまのIPを返して、取り直す
ipconfig /release
ipconfig /renew

# Mac:DHCPリースを更新(システム設定からでも可)
sudo ipconfig set en0 DHCP

# Linux
sudo dhclient -r eth0
sudo dhclient eth0
DHCPサーバーが2台あると事故になります 社員が持ち込んだ家庭用ルーターを、LANポートに逆向きに挿してしまう。これだけでそのルーターがDHCPサーバーとして応答を始め、周囲の端末に誤った設定が配られます。フロア全体が通信不能になる、実際によくある障害です。対策としてスイッチのDHCPスヌーピング機能で、許可した口以外からの応答を遮断します。

ARP ── IPからMACを調べる

同じLAN内で相手にフレームを届けるには、相手のMACアドレスが要ります。しかし手元にあるのはIPアドレスだけです。そこでARP(アープ)を使い、LAN全体に「このIPアドレスの人、MACアドレスを教えてください」と呼びかけます。

ARPのやり取り
  PC-A(192.168.1.10)が 192.168.1.20 と話したい

  ① ARPリクエスト(ブロードキャスト=全員に届く)
     「192.168.1.20 の人、MACアドレスを教えてください」
        A ──▶ 全員(B、C、D……)

  ② ARPリプライ(ユニキャスト=Aにだけ返す)
     「私です。00:1A:2B:3C:4D:5E です」
        B ──▶ A

  ③ AはARPテーブルに記録し、しばらく再利用する
     192.168.1.20 → 00:1A:2B:3C:4D:5E (数分で消える)
ARPテーブルを見る・消す
# 一覧表示(Windows / Mac / Linux 共通に近い)
arp -a

# Windows:ARPキャッシュを消す(管理者権限)
netsh interface ip delete arpcache

# Linux
ip neigh show
sudo ip neigh flush all
IPアドレスの重複を見つける方法 「ときどき通信が切れる」という相談は、IPアドレスの重複が原因のことがあります。arp -a で同じIPアドレスに対して異なるMACアドレスが現れたり、Windowsが「IPアドレスの競合を検出しました」と警告を出したりします。固定IPを手で設定する運用をしていると必ず起きるため、台帳での管理が欠かせません。

ICMP ── 通信の様子を知らせる連絡係

ICMP(アイシーエムピー)は、データを運ぶためではなく、通信の状態を知らせるためのプロトコルです。pingtraceroute はこれを使っています。

メッセージ意味見えたときの判断
Echo Request / Replyping の往復返ってくれば、L3までは疎通している
Destination Unreachable宛先に到達できない経路がない、またはファイアウォールで拒否されている
Time ExceededTTLが0になったtraceroute が経路を調べるのに利用している。ループの可能性も
Redirectもっとよい経路がある経路設計に無駄がある可能性
pingが返らない=壊れている、とは限りません セキュリティ方針でICMPを遮断しているサーバーは珍しくありません(クラウドの初期設定でも遮断が多い)。pingが返らないときは、TCPの該当ポートで試すのが確実です。Windowsなら Test-NetConnection 相手 -Port 443、Mac/Linuxなら nc -vz 相手 443 を使います。

まとめ ── ケーブルを挿してから、Webが見えるまで

  • L1・L2ケーブルが挿さり、リンクが上がる。スイッチのランプが点灯する
  • DHCPDORAの4段階で、IP・マスク・GW・DNSを受け取る
  • ARPデフォルトゲートウェイのMACアドレスを調べる
  • DNS入力されたURLの名前を、IPアドレスに変換する
  • TCP相手の443番へ3ウェイハンドシェイクで接続する
  • TLS証明書を確認し、暗号化の鍵を決める
  • HTTPページの中身を要求し、受け取って画面に描く

この7行が、ネットワーク技術者の共通言語です。面接でも「URLを入力してからページが表示されるまでに何が起きますか」という形でよく問われます。空で言えるようにしてください。

一問一答
  1. DHCPの4段階を順に答えてください。
  2. ARPは何を何に変換しますか。またその通信はどこまで届きますか。
  3. 社内で突然フロア全体が通信不能になりました。持ち込み機器が原因のとき、何が起きた可能性が高いですか。
  4. pingが返らないサーバーの疎通を確認する、別の方法を挙げてください。
解答を見る
  1. DISCOVER → OFFER → REQUEST → ACK(DORA)。
  2. IPアドレスをMACアドレスに変換する。リクエストはブロードキャストなので、同じLAN(ブロードキャストドメイン)の中だけに届く。
  3. 持ち込んだルーターが不正なDHCPサーバーとして応答し、誤ったIP設定を配ってしまった。
  4. TCPの特定ポートへの接続を試す(Test-NetConnection -Port 443nc -vz host 443curl -I など)。
STEP 8 しくみ

HTTPとHTTPS ── Webページが表示されるまでの全工程

目安 4日
このステップの到達点 ── HTTPのやり取りを自分の手で送れる。TLSが「盗聴・改ざん・なりすまし」の3つをどう防いでいるかを説明でき、証明書エラーの原因を切り分けられる。

HTTP ── 要求と応答の、単純な往復

HTTPは、「これをください」(リクエスト)と「はいどうぞ」(レスポンス)の往復だけでできています。中身は人間が読める文字列です。

HTTPのやり取り(実際に流れている文字列)
  ■ リクエスト
     GET /index.html HTTP/1.1
     Host: www.example.com
     User-Agent: Mozilla/5.0 ...
     Accept: text/html

  ■ レスポンス
     HTTP/1.1 200 OK
     Content-Type: text/html; charset=UTF-8
     Content-Length: 1256
     (空行)
     <html> ... ページの中身 ... </html>
状態コード意味現場での読み方
200 OK成功正常
301 / 302転送別のURLへ誘導。httpからhttpsへの転送でよく使う
400要求が不正送った側の書式の問題
401 / 403認証が必要/禁止権限の設定を確認
404見つからないURLの誤り、ファイルの消失
500サーバー内部エラーアプリ側の不具合。ネットワークの問題ではないことが多い
502 / 504上流が不正/応答なし手前のプロキシやロードバランサは生きていて、その奥が落ちている
503一時的に利用不可過負荷、メンテナンス中
切り分けの勘どころ 4xxは頼んだ側、5xxは受けた側の問題です。とくに502と504は、ネットワーク担当が最初に呼ばれる番号。手前の機器(ロードバランサやプロキシ)は動いているのに、その奥のサーバーが応答していない状態を示すためです。この一言が言えるだけで、対応が速くなります。

HTTPS ── HTTPをTLSで包む

HTTPは中身がそのまま流れるため、途中で読まれます。そこでTLS(ティーエルエス。古い呼び名はSSL)で包んだものがHTTPSです。TLSは3つの問題を同時に解きます。

  1. 盗聴を防ぐ(暗号化) ── 途中で見られても内容が分からない
  2. 改ざんを検知する(完全性) ── 書き換えられたら受け取り側が気づく
  3. なりすましを防ぐ(認証) ── 相手が本物のサーバーか、証明書で確認する

とくに3つ目が重要です。暗号化だけなら誰でもできますが、「その相手が本物かどうか」は、第三者(認証局)の保証がなければ判断できません。ブラウザの鍵マークは、この保証が確認できたという意味です。

TLSハンドシェイクの概略
  クライアント                                     サーバー
      │─ ClientHello(使える暗号方式の一覧)──────▶│
      │◀─ ServerHello(使う方式を選択)───────────│
      │◀─ Certificate(サーバー証明書を提示)───────│
      │                                               │
      │  ① 証明書を検証する                            │
      │    ・信頼できる認証局が署名しているか            │
      │    ・有効期限内か                               │
      │    ・アクセス先のドメイン名と一致しているか        │
      │                                               │
      │──── 鍵交換(共通鍵を安全に決める)──────────▶│
      │◀═══ ここから先は暗号化された通信 ═══════▶│
HTTPとTLSを手で確かめる
# ヘッダーだけ取得する(状態コードの確認に最適)
curl -I https://www.iana.org

# 通信の詳細を表示(TLSのやり取りも見える)
curl -v https://www.iana.org

# 証明書の中身と有効期限を確認する
openssl s_client -connect www.iana.org:443 -servername www.iana.org

# 有効期限だけを取り出す
echo | openssl s_client -connect www.iana.org:443 2>/dev/null | openssl x509 -noout -dates
証明書エラーの三大原因 ブラウザが警告を出すとき、原因はほぼこの3つです。①有効期限切れ(更新の失敗。最も多い)、②名前の不一致example.com の証明書で www.example.com にアクセスしている)、③中間証明書の設定漏れ(ブラウザでは見えるのに、スマホアプリやコマンドからだけ失敗する、という形で現れる)。③は特に気づきにくいので、公開前に外部の検査サービスで必ず確認します。
HTTPSでも隠れないもの TLSは中身を暗号化しますが、「どのサーバーに接続したか」は隠れません。接続先のIPアドレスと、SNIというしくみで送られるドメイン名は、途中の経路から見えます。「HTTPSだから何も分からない」というのは誤解です。企業のネットワークでアクセス先のドメインが記録できるのは、このためです。
一問一答
  1. 502エラーを見たとき、まずどこを疑いますか。
  2. TLSが解決している3つの問題を挙げてください。
  3. 証明書の検証で確認される項目を3つ挙げてください。
  4. HTTPSを使っていても、経路上から分かってしまう情報は何ですか。
解答を見る
  1. 手前のプロキシやロードバランサは生きているので、その奥にあるアプリケーションサーバーの停止や異常を疑う。
  2. 盗聴の防止(暗号化)、改ざんの検知(完全性)、なりすましの防止(サーバー認証)。
  3. 信頼できる認証局の署名か、有効期限内か、アクセス先のドメイン名と一致しているか。
  4. 接続先のIPアドレスと、SNIで送られるドメイン名。通信量やタイミングも観測できる。
STEP 9 構築

無線LAN ── 見えない電波を、見えるように扱う

目安 4日
このステップの到達点 ── 「Wi-Fiが遅い」という相談に対して、周波数帯・チャネル・電波干渉・端末数の観点から原因を挙げられる。暗号化方式を安全な順に並べられる。

規格と世代 ── 数字の読み方

Wi-Fiの正式名称はIEEE 802.11(アイトリプルイー はちまるにいてんいちいち)です。末尾のアルファベットが世代を表しますが、分かりにくいため、近年はWi-Fi 6のような通し番号でも呼ばれます。

通称規格周波数帯最大速度(規格上)現場での位置づけ
802.11n2.4 / 5GHz600Mbpsまだ現役の古い端末が使う。Wi-Fi 4
Wi-Fi 5802.11ac5GHz6.9Gbpsいまも多数。実効は数百Mbps
Wi-Fi 6802.11ax2.4 / 5GHz9.6Gbps新規導入の標準。多数の端末が同時に使う環境で強い
Wi-Fi 6E802.11ax+6GHz9.6Gbps6GHz帯が使えて干渉が少ない。対応端末はまだ限定的
Wi-Fi 7802.11be2.4 / 5 / 6GHz46Gbps普及の途上。複数帯域の同時利用が特徴

2.4GHzと5GHz ── 性格が正反対

2.4GHz帯 遠くまで届く

壁を回り込みやすく、広い範囲をカバーできる。ただし電子レンジ・Bluetooth・コードレス電話と同じ帯域で干渉が多く、使えるチャネルが少ない(実質3つ)。速度も出にくい。

5GHz帯 速いが届きにくい

干渉が少なく速い。チャネルも多い。ただし壁や床に弱く、距離が伸びない。一部のチャネルは気象レーダーを検知すると自動で移動する(DFS)ため、その瞬間に通信が数十秒途切れることがある。

6GHz帯 いちばん空いている

Wi-Fi 6E以降で使える新しい帯域。既存機器がいないため干渉が非常に少ない。対応端末が必要で、届く距離は5GHzよりさらに短い。

2.4GHzのチャネル設計 日本で使える1〜13チャネルのうち、電波が重ならないのは1・6・11の3つだけです。隣り合うチャネルは互いに干渉します。事務所に複数のアクセスポイントを置くときは、この3つを繰り返し配置します。「空いているから3チャネルにしよう」は、1と6の両方を邪魔する最悪の選択です。
アクセスポイントのチャネル配置(2.4GHz帯)
  ○ 正しい配置                     × 悪い配置
  ┌─────┬─────┬─────┐      ┌─────┬─────┬─────┐
  │ ch1 │ ch6 │ ch11│      │ ch1 │ ch3 │ ch6 │
  └─────┴─────┴─────┘      └─────┴─────┴─────┘
   電波が重ならない                ch3 が ch1 と ch6 の
   → 3台とも本来の速度が出る        両方に干渉して全部遅くなる

  ※ 5GHz帯はチャネルが多いので、この制約はゆるい

暗号化と認証 ── 安全な順に

方式読み方安全性判断
WEPウェップ解読可能絶対に使わない。数分で破られる
WPAダブリューピーエー危険使わない
WPA2-PSK(AES)実用上まだ可現状の最低ライン。パスワードは長く
WPA3-SAE推奨新規導入はこれ。総当たり攻撃に強い
WPA2/3-Enterprise最も堅いID・パスワードや証明書で個人ごとに認証。会社はこれが理想(IEEE 802.1X)
会社のWi-Fiで、共有パスワードが危険な理由 全員が同じパスワードを使う方式(PSK)では、退職者が出るたびに全端末のパスワードを変えなければ安全を保てません。現実には変えないので、鍵は流出し続けます。Enterprise方式なら、退職者のアカウントを止めるだけで済みます。「人が入れ替わる組織ほどEnterprise」と覚えてください。

「Wi-Fiが遅い」への向き合い方

  • まず確認有線でも遅いか? 有線でも遅ければ、Wi-Fiの問題ではありません(回線か上位側)
  • 電波強度端末に表示される強度(RSSI)。−70dBmより弱いと実用が厳しい
  • 干渉近隣のアクセスポイントと同じチャネルになっていないか。スマホアプリでも調べられる
  • 端末数1台のアクセスポイントに何台ぶら下がっているか。目安は20〜30台まで。会議室に人が集まると起きる
  • 帯域古い端末が2.4GHzで低速通信していると、全体の速度を引き下げる
  • 上流アクセスポイントとスイッチをつなぐ線が1Gbpsのままではないか(Wi-Fi 6には不足)
無線の状態を調べる
# Windows:接続中の無線情報(信号品質・チャネル・速度)
netsh wlan show interfaces

# 保存されているプロファイルの一覧
netsh wlan show profiles

# 近くのアクセスポイントを一覧(BSSIDと信号強度)
netsh wlan show networks mode=bssid

# Mac(Option キーを押しながらWi-Fiアイコンでも詳細が見えます)
system_profiler SPAirPortDataType

# Linux
iwconfig
nmcli device wifi list
一問一答
  1. 2.4GHz帯で、互いに干渉しないチャネルを3つ挙げてください。
  2. 2.4GHzと5GHzの長所・短所を、それぞれ一言で説明してください。
  3. 社員が入れ替わる会社で、WPA2-PSKよりEnterprise方式が望ましいのはなぜですか。
  4. 「Wi-Fiが遅い」と相談されたとき、最初に確認すべきことは何ですか。
解答を見る
  1. 1・6・11チャネル。
  2. 2.4GHzは遠くまで届くが干渉が多く遅い。5GHzは速く干渉が少ないが、壁に弱く距離が短い。
  3. PSKは全員が同じ鍵を共有するため、退職者が出るたびに全端末の再設定が必要になる。Enterpriseは個人ごとの認証なので、アカウントを停止するだけで済む。
  4. 有線接続でも遅いかどうか。有線でも遅ければ、原因は無線ではなく回線や上位側にある。
STEP 10 構築

機器と回線 ── 何をどこに置くのか

目安 5日
このステップの到達点 ── ネットワーク機器の役割を層と結びつけて説明でき、構成図を見て「この箱は何をしているか」が全部言える。回線の種類と、選ぶときの判断軸を持つ。

機器の役割を、層で整理する

リピータ/ハブ L1

信号をそのまま増幅・分配するだけ。中身を見ない。現在の新規導入はほぼない。

スイッチ(L2) L2

MACアドレスを見て、必要なポートにだけ転送。VLANで分割できる。事務所の各フロアに置く主役。

L3スイッチ L2+L3

スイッチにルーティング機能を足したもの。VLAN間の通信を高速に処理する。社内の中心に置く。

ルーター L3

異なるネットワークをつなぐ。NAT、WAN側の接続、経路制御を担当。拠点の出入口に置く。

ファイアウォール L3〜L7

通してよい通信を判断して遮断する。UTMは、これにウイルス対策やWebフィルタを足した製品。

ロードバランサ L4/L7

複数のサーバーに負荷を振り分ける。1台落ちても切り離して運転を続けられる。

プロキシ L7

端末に代わって外部と通信する。アクセス先の記録、フィルタリング、キャッシュに使う。

無線アクセスポイント L1/L2

電波と有線をつなぐ。多数を置く場合はコントローラで集中管理する。

ルーターとL3スイッチの使い分け どちらもルーティングをしますが、ルーターはWAN側(外との接続、NAT、多様な回線に対応)L3スイッチは社内側(VLAN間を高速に、多数のポートで)が得意です。「外向きはルーター、内向きはL3スイッチ」と覚えると、構成図の意図が読めるようになります。

小規模オフィスの典型的な構成

社員30〜50名規模の、標準的な構成
                        インターネット
                             │
                       ┌─────┴─────┐
                       │  ONU(回線終端) │  ← 回線事業者の機器
                       └─────┬─────┘
                             │
                    ┌────────┴────────┐
                    │ ルーター/UTM       │  ← NAT・ファイアウォール
                    │ (WAN: 203.0.113.7) │     VPNの出入口
                    └────────┬────────┘
                             │
                  ┌──────────┴──────────┐
                  │  コアスイッチ(L3スイッチ)  │  ← VLAN間ルーティング
                  │  VLAN10/20/30/99 の集約   │
                  └───┬──────┬──────┬───┘
                      │      │      │
            ┌─────────┘      │      └─────────┐
      ┌─────┴─────┐   ┌──────┴──────┐   ┌─────┴──────┐
      │ フロアSW 1F  │   │  フロアSW 2F  │   │  サーバー用SW │
      └──┬────┬───┘   └──┬─────┬───┘   └──┬─────┬──┘
         │    │           │     │           │     │
        PC   無線AP       PC    無線AP      NAS   業務サーバー

  VLAN設計例
    VLAN 10  社員用   192.168.10.0/24
    VLAN 20  来客用   192.168.20.0/24  ← 社内へは通さない
    VLAN 30  サーバー 192.168.30.0/24
    VLAN 99  管理用   192.168.99.0/24  ← 機器の設定画面はここだけ

この図が読めて、自分で描けるようになれば、構築の打ち合わせに参加できます。まずは自分の職場や自宅の構成を、この形式で描き出してみてください。それが最良の練習になります。

回線の種類

種類速度の考え方費用向き・不向き
光回線(ベストエフォート)最大1Gbpsなどと表示されるが、保証はない安い一般的な事務所。混雑時間帯に落ちる
帯域確保型・専用線契約した速度が保証される高い止められない基幹業務、拠点間接続
モバイル回線(LTE / 5G)場所と時間で変動臨時拠点、主回線が落ちたときの予備
閉域網(IP-VPN・広域イーサ)事業者網の中だけを通る高い拠点間を安全に結ぶ。インターネットを経由しない
PPPoEとIPoE ── 「夜だけ遅い」の正体 光回線でインターネットに出る方式には2つあります。PPPoE(ピーピーピーオーイー)は古くからの方式で、事業者の設備(網終端装置)に接続が集中し、夜間に極端に遅くなることがあります。IPoE(アイピーオーイー)はこの集中点を通らないため、混雑に強い方式です。「夜だけ遅い」という相談は、この切り替えで解決することが非常に多く、実務で真っ先に確認する定番です。
ベストエフォートの意味を、正しく伝える 「1Gbpsの回線なのに200Mbpsしか出ない」という苦情はよくありますが、ベストエフォート型は「最大値であって保証値ではない」契約です。速度を約束させたい業務があるなら、帯域確保型を選ぶしかありません。この説明ができることも、実務では立派な仕事です。

機器を選ぶときの判断軸

  1. ポート数:現在の台数+将来の増加分+予備。埋まってから買い足すと配線が乱れます
  2. PoE対応か:無線APやIP電話、カメラはLANケーブルから給電(PoE)できると配線が激減します
  3. 管理機能:VLANやログが必要なら「インテリジェントスイッチ」。単なる分岐なら安価なもので足ります
  4. 冗長性:電源が二重化できるか、機器を2台構成にできるか
  5. 保守:故障時に何日で代替機が届くか。ここが実務では最重要で、値段より優先されることがあります
一問一答
  1. ルーターとL3スイッチは、それぞれどんな場面で使い分けますか。
  2. PoEとは何ですか。何がうれしいですか。
  3. 「夜だけインターネットが遅い」という相談に対し、回線の観点でまず何を確認しますか。
  4. VLAN 99 を「管理用」として分ける狙いは何ですか。
解答を見る
  1. ルーターは外部との接続(WAN、NAT、VPN)に、L3スイッチは社内のVLAN間を高速に転送するために使う。
  2. LANケーブルを通じて電力も供給する仕組み。無線APやIP電話、カメラに電源工事なしで給電でき、設置の自由度が上がる。
  3. 接続方式がPPPoEかIPoEか。PPPoEなら混雑による低下の可能性が高い。
  4. 機器の設定画面へ到達できる範囲を限定し、通常の業務用ネットワークから侵入されないようにするため。
STEP 11 構築

設計と構築 ── アドレス設計・冗長化・IPv6

目安 1週間
このステップの到達点 ── 白紙の状態からアドレス設計表を自分で書ける。冗長化の代表的な手法を挙げ、それぞれ何の故障に備えるものかを説明できる。

アドレス設計 ── 最初に決めて、後から変えない

ネットワーク構築で、後から変更するのが最も大変なのがIPアドレス設計です。機器は交換できますが、アドレス体系を変えると、サーバー、プリンタ、ファイアウォールの設定、業務システムの接続先まで、すべてを直すことになります。だから最初に、余裕をもって決めます。

VLAN用途ネットワークゲートウェイ割り当て方針
10社員(有線)192.168.10.0/24192.168.10.1.100〜.199 をDHCP、.10〜.99 は固定用に予約
11社員(無線)192.168.11.0/24192.168.11.1全域DHCP
20来客・BYOD192.168.20.0/24192.168.20.1全域DHCP。社内への通信は全遮断
30サーバー192.168.30.0/24192.168.30.1すべて固定。台帳で管理
40プリンタ・複合機192.168.40.0/24192.168.40.1DHCP予約(MACに対して固定のIPを配る)
50IP電話・カメラ192.168.50.0/24192.168.50.1DHCP。音声を優先する設定(QoS)
99機器管理192.168.99.0/24192.168.99.1すべて固定。管理者のみ到達可
設計の原則を4つ
VLAN番号と第3オクテットをそろえる(VLAN 10 なら 192.168.10.0/24)。障害対応のとき、アドレスを見た瞬間に用途が分かります。
ゲートウェイは必ず .1 に統一する。あるいは .254 に統一する。混在させないこと。
DHCPの範囲と固定の範囲を、はっきり分ける。重なると必ず事故が起きます。
拠点が複数あるなら、拠点ごとに第2オクテットを変える(本社192.168.x.x、大阪192.169…ではなく、10.1.x.x/10.2.x.x のように10系で設計するのが定石)。
使ってはいけないアドレスの選び方 家庭用ルーターの初期値である 192.168.0.0/24192.168.1.0/24 は、会社では避けるのが無難です。理由は、社員が自宅からVPNで接続したとき、自宅と会社のアドレスが衝突して通信できなくなるためです。在宅勤務がある組織では、これは実害のある問題です。

冗長化 ── 1つ壊れても止めない

手法読み方何の故障に備えるか概要
VRRP / HSRPブイアールアールピールーターの故障2台のルーターが1つの仮想IPを共有し、片方が落ちたら自動で引き継ぐ
リンクアグリゲーション(LAG)ケーブル1本の断線複数の物理ポートを束ねて1本として扱う。帯域も増える
スパニングツリー(STP)ループの発生ケーブルを環状に配線しても、片方を自動で論理的に遮断してループを防ぐ
スタック構成スイッチ本体の故障複数のスイッチを1台として扱う。設定も1つで済む
回線の二重化回線事業者側の障害別事業者の回線やモバイル回線を予備に持つ
電源の二重化電源ユニットの故障、停電電源ユニット2台、UPS(無停電電源装置)
ループ事故 ── 現場で最も多い大規模障害 スイッチのポートに、同じスイッチの別ポートへLANケーブルを挿してしまう。たったこれだけで、ブロードキャストが無限に増殖し(ブロードキャストストーム)、フロア全体、ときには全社が数分で通信不能になります。掃除や席替えのあとに起きがちです。対策は、STPを有効にすること、そして使わないポートを閉じておくことです。

IPv6 ── 避けて通れなくなってきた

IPv4のアドレスは約43億個で、すでに枯渇しています。そこで、128ビット(事実上無尽蔵)のIPv6への移行が進んでいます。表記は 2001:db8::1 のように、16進数を : で区切ります。

  • 0の省略:連続する0のかたまりは :: で1回だけ省略できる
  • NATが要らない:全端末にグローバルアドレスを付けられる(だからファイアウォールがより重要になる)
  • ブロードキャストがない:マルチキャストで代替される
  • 自動設定:ルーターの広告(RA)を受け取り、端末が自分でアドレスを作れる
実務での現実的な向き合い方 多くの企業内ネットワークは、当面IPv4のままです。しかしインターネット接続(IPoE)ではIPv6が使われており、家庭ではすでに標準です。初学者は、①表記が読める ②IPv4と併用(デュアルスタック)されていることを知っている ③トラブル時に ping -6 で切り分けられる、の3点をまず押さえてください。
IPv4/IPv6を分けて確認する
# Windows
ping -4 www.google.com
ping -6 www.google.com
netsh interface ipv6 show address

# Mac / Linux
ping -4 www.google.com
ping6 www.google.com
ip -6 addr show
切り分けのヒント

「特定のサイトだけ表示が異常に遅い」とき、IPv6で接続を試みて失敗し、IPv4に切り替わるまでの待ち時間が原因のことがあります。-4 を付けて速くなるなら、IPv6経路に問題があると判断できます。

一問一答
  1. 会社のネットワークで 192.168.1.0/24 を避けたほうがよいのはなぜですか。
  2. VRRPは何のための仕組みですか。
  3. スイッチのポートにケーブルを環状に挿してしまうと何が起きますか。防ぐ仕組みは何ですか。
  4. DHCPで配る範囲と、固定IPで使う範囲を分けるのはなぜですか。
解答を見る
  1. 家庭用ルーターの初期値と同じため、在宅勤務者がVPN接続したときに自宅側のネットワークと衝突するから。
  2. 2台のルーターで1つの仮想IPアドレスを共有し、片方が故障しても自動的にもう片方が引き継ぐことで、デフォルトゲートウェイを止めないための仕組み。
  3. ブロードキャストが無限に増殖するブロードキャストストームが発生し、通信不能になる。スパニングツリー(STP)で片方の経路を論理的に遮断して防ぐ。
  4. 同じアドレスが二重に使われるのを防ぐため。重なるとIPアドレスの競合が起き、断続的な通信障害になる。
STEP 12 運用

トラブルシューティング ── 切り分けの型を身につける

目安 1週間
このステップの到達点 ── 「つながりません」という曖昧な連絡から、決まった手順で原因の場所を特定できる。ここが、実務で最も評価される能力です。知識の量より、手順を持っているかどうかが差になります。

大原則 ── 下から上へ、近くから遠くへ

切り分けの手順は、STEP 1で学んだ層の順番そのままです。L1から順に、確認できたところまでを「白」にしていく。これを機械的に行えば、勘に頼らず原因にたどり着けます。

切り分けの標準手順(この順に、必ず上から)
  ① 範囲の確認     …「誰が」「いつから」「何ができない」
     └ 1人だけ? 全員? 特定のサイトだけ? ← ここで原因の8割が絞れる

  ② L1 物理       … ケーブル、ランプ、電源
     └ ipconfig / ip link show でリンク状態を確認

  ③ L2/L3 自分自身 … 自分にIPアドレスが正しく付いているか
     └ ipconfig /all  → 169.254 なら DHCP異常で確定
     └ ping 127.0.0.1(自分自身が生きているか)

  ④ L3 同一LAN内   … 隣まで届くか
     └ ping デフォルトゲートウェイ(例: ping 192.168.1.1)
     └ 失敗 → LAN内(ケーブル、スイッチ、VLAN設定)の問題

  ⑤ L3 外部       … インターネットまで届くか
     └ ping 8.8.8.8(名前を使わずIPで試すのが重要)
     └ 失敗 → ルーター、回線、NAT の問題
     └ tracert / traceroute でどこまで進むか確認

  ⑥ 名前解決      … 名前が引けるか
     └ nslookup www.example.com
     └ 8.8.8.8 は通るのに名前が引けない → DNSの問題で確定

  ⑦ L4/L7 サービス … 相手のポートが開いているか、中身が返るか
     └ Test-NetConnection host -Port 443 / nc -vz host 443
     └ curl -I https://host
この手順の価値 慣れた技術者は、①の質問だけで原因の見当を付けます。「1人だけ」なら端末かポート、「フロア全員」ならスイッチかVLAN、「全社」ならルーターか回線、「特定のサイトだけ」ならDNSか相手側。まずこの切り口を身につけてください。闇雲に再起動するより、はるかに速く解決します。

コマンド早見表 ── これだけ覚えれば戦える

目的WindowsMac / Linux何が分かるか
自分の設定を見るipconfig /allip addr / ifconfigIP・マスク・GW・DNS・MAC
疎通を確認ping 相手ping 相手L3で届くか、往復時間
経路をたどるtracert 相手traceroute 相手どこまで進んで止まったか
経路+損失を継続監視pathping 相手mtr 相手どの区間でパケットが落ちているか
名前解決nslookup 名前dig 名前DNSが正しく引けるか
経路表を見るroute printip routeどこへ転送されるか
接続の一覧netstat -anoss -tanp通信中・待ち受け中のポート
ARPの確認arp -aip neighIPとMACの対応、重複の兆候
ポートの開通確認Test-NetConnection h -Port 443nc -vz h 443TCPで届くか(pingが遮断されていても分かる)
HTTPの確認curl -I URLcurl -I URL状態コード、リダイレクト先

pingの読み方 ── 数字に意味がある

pingを、意味のある形で打つ
# Windows:回数を指定、連続実行、サイズ指定
ping 8.8.8.8 -n 10
ping 8.8.8.8 -t          # 止めるまで continuous(Ctrl+C で停止)
ping 8.8.8.8 -l 1472 -f  # 分割禁止で大きなパケット(MTUの確認)

# Mac / Linux
ping -c 10 8.8.8.8
ping -s 1472 -M do 8.8.8.8
出力の読み方
64 bytes from 8.8.8.8: icmp_seq=1 ttl=118 time=8.42 ms
--- 8.8.8.8 ping statistics ---
10 packets transmitted, 10 received, 0% packet loss
rtt min/avg/max/mdev = 8.21/8.90/9.87/0.52 ms
  • time(往復時間):同一LAN内なら1ms未満、国内のサーバーなら10〜30ms、海外なら100ms超が目安
  • packet loss0%が正常。数%でも出ていれば異常。会議の音声が途切れる原因になります
  • ばらつき(mdev/ジッター):平均が良くても揺らぎが大きいと、音声や映像は乱れます
  • ttl:残りの生存回数。値から、途中で通過したルーター数を推測できます
「pingは通るのにWebが見えない」 これはよくある状況で、原因はほぼ2つに絞られます。①DNSが引けていない(IPでは通るのに名前で通らない)、②相手の443番だけが遮断されている(ファイアウォールやプロキシの設定)。層で切り分ける習慣があれば、数分で判別できます。

tracerouteで、どこまで進んだかを見る

経路をたどる
# Windows
tracert -d www.iana.org      # -d で名前解決を省略して速くする

# Mac / Linux
traceroute www.iana.org
mtr www.iana.org             # 経路と損失を継続表示(最も便利)
読み方

途中の * * * は、必ずしも異常ではありません。応答を返さない設定のルーターは普通に存在します。異常と判断してよいのは、そこから先がすべて届かなくなっている場合です。また、1行目(自分のゲートウェイ)で止まるなら社内の問題、2〜3行目(回線事業者側)で止まるなら回線の問題、と切り分けの境界が見えてきます。

やってはいけない対応

  • まず再起動する ── 直ることはありますが、原因が消えて再発します。せめて再起動前に ipconfig /all の結果を保存しておく
  • 複数の設定を同時に変える ── どれが効いたか分からなくなる。1回に1つ
  • 記録を取らない ── いつ何をして、どうなったか。これが翌日の自分と、次の担当者を助けます
  • 推測で断定する ── 「たぶん回線障害です」と伝えて違った場合、失う信頼は大きい。確認できた事実と、推測を分けて話す
一問一答
  1. 「インターネットにつながりません」と連絡を受けました。最初に確認すべきことを2つ挙げてください。
  2. ping 8.8.8.8 は成功し、ping www.google.com は失敗しました。原因はどこにありますか。
  3. tracerouteの途中に * * * が出ました。これは必ず異常ですか。
  4. pingは通るのにWebページが表示されないとき、考えられる原因を2つ挙げてください。
解答を見る
  1. 影響範囲(1人か、フロアか、全社か)と、いつから発生しているか。あわせて直前に何か変更がなかったかも確認する。
  2. DNS(名前解決)。IPアドレスでは到達できているので、L3までは正常。
  3. 異常とは限らない。ICMPに応答しない設定のルーターは多い。その先も含めて到達しない場合に問題と判断する。
  4. DNSが引けていない、または対象ポート(443など)がファイアウォールやプロキシで遮断されている。
STEP 13 運用

監視・ログ・パケットキャプチャ ── 起きる前に気づく

目安 5日
このステップの到達点 ── 監視で「何を」「どう」見るかを説明でき、Wiresharkで自分の通信を観察できる。障害が起きてから調べるのではなく、予兆で気づくという運用の発想を持つ。

監視の3つの層

種類見るもの代表的な方法気づけること
死活監視生きているかping、ポート監視停止、再起動。最低限これだけは必ず入れる
性能監視どれくらい使われているかSNMP(トラフィック量、CPU、メモリ)回線の逼迫、機器の限界が近いこと
ログ監視何が起きたかSyslog、機器のログ収集設定変更、認証失敗、リンクの上下

SNMP(エスエヌエムピー)は、機器から情報を集める標準的な仕組みです。監視サーバーが各機器に定期的に問い合わせ(ポーリング)、逆に機器側から異常を通知することもできます(SNMPトラップ)。Syslog(シスログ)は、機器のログを1か所のサーバーに集める仕組みです。

ログは、必ず外部に集めます 機器の中のログは、容量が小さく古いものから消え、機器が壊れると一緒に失われます。障害のときに見たいのは、まさにその失われた部分です。Syslogサーバーを立てて集約するのは、規模を問わず最初にやるべき運用整備の一つです。あわせてNTPで全機器の時刻を合わせておくこと。時刻がずれていると、複数機器のログを突き合わせられません。

何を、どのくらいで警告するか

  • 回線使用率70%を超えたら注意。100%になってからでは遅い。バースト(瞬間的な跳ね上がり)も見る
  • CPU・メモリ:平常時との差を見る。急に上がった=何かが変わった
  • エラーカウンタ:スイッチのポートのエラー数。増え続けるならケーブルや機器の劣化。断線の予兆
  • パケットロス・遅延:0%からの変化。会議品質の悪化として先に現れる
  • 証明書の有効期限30日前に警告。期限切れは毎年どこかで起きる定番の事故
警告を出しすぎると、誰も見なくなります 監視の最大の失敗は、意味のない警告メールが1日に何百通も届く状態です。こうなると、本当に重要な警告が埋もれます。「鳴ったら必ず誰かが行動する」ものだけを警告にし、それ以外は記録にとどめる。これが運用設計の要点です。

パケットキャプチャ ── 実際に流れているものを見る

推測ではなく事実を見る、最終手段がパケットキャプチャです。Wireshark(ワイヤーシャーク)という無料ソフトが標準的に使われます。

コマンドで取る(tcpdump / Windows)
# Linux / Mac:eth0 のHTTPS通信だけを表示
sudo tcpdump -i eth0 port 443 -nn

# ファイルに保存して、あとでWiresharkで開く
sudo tcpdump -i eth0 -w capture.pcap

# 特定の相手との通信だけを見る
sudo tcpdump -i eth0 host 192.168.1.50 -nn -v

# DNSのやり取りだけを見る(学習に最適)
sudo tcpdump -i eth0 port 53 -nn

# Windows(標準機能。あとでWiresharkで開ける)
netsh trace start capture=yes tracefile=C:\temp\net.etl
netsh trace stop
Wiresharkの表示フィルタ意味
ip.addr == 192.168.1.50その端末に関わる通信だけ
tcp.port == 443HTTPS通信だけ
dnsDNSのやり取りだけ
tcp.flags.syn == 1 && tcp.flags.ack == 0接続を開始しようとしている通信だけ
tcp.analysis.retransmission再送。ここが多ければ回線品質が悪い
http.response.code >= 400エラーになったHTTP応答だけ
最初の練習 Wiresharkを起動し、フィルタに dns と入れた状態で、ブラウザで適当なサイトを開いてみてください。STEP 6で学んだ名前解決が、目の前で実際に流れます。「Standard query A www.example.com」→「Standard query response A 93.184.x.x」。教科書の図が現実になる瞬間で、ここで理解が一段深まります。
キャプチャは、必ず許可を得てから パケットキャプチャは、他人の通信内容を取得しうる行為です。会社のネットワークで実施する際は、必ず責任者の承認を得てください。取得したデータには個人情報や認証情報が含まれる可能性があり、保管と廃棄にも注意が要ります。自宅の自分の端末で練習する分には問題ありません。
一問一答
  1. 死活監視・性能監視・ログ監視は、それぞれ何を見る監視ですか。
  2. 機器のログを外部のSyslogサーバーに集める理由を2つ挙げてください。
  3. スイッチのポートのエラーカウンタが少しずつ増えています。何が起きていると考えられますか。
  4. 監視で警告を出しすぎると、なぜ問題なのですか。
解答を見る
  1. 死活監視は生きているかどうか、性能監視は使用率や負荷、ログ監視は機器で起きた事象の記録。
  2. 機器内のログは容量が小さく上書きで消えるため。機器自体が故障するとログも失われるため。(あわせて複数機器を横断して調べられる利点もある)
  3. ケーブルやコネクタの劣化、機器の故障の予兆。断線する前に交換を検討する。
  4. 本当に重要な警告が大量の通知に埋もれ、誰も確認しなくなるため。
STEP 14 セキュリティ

ネットワークセキュリティ ── 境界防御からゼロトラストへ

目安 1週間
このステップの到達点 ── ファイアウォールのルールを自分で書ける。VPNの種類を使い分けられる。「なぜ境界防御だけでは足りないのか」を、自分の言葉で説明できる。

ファイアウォール ── 通す通信を、明示的に決める

ファイアウォールは、通信の条件を見て、通すか捨てるかを判断する機器です。判断に使うのは、送信元IP・宛先IP・宛先ポート・プロトコル・通信の向きです。

設計の原則は一つだけ、デフォルト拒否(ホワイトリスト方式)です。「危ないものを塞ぐ」のではなく、「必要なものだけ通し、残りは全部捨てる」。危ないものを列挙する方式は、必ず漏れます。

ルールは上から順に評価され、最初に一致したものが適用される
  番号 送信元          宛先            ポート    動作   目的
  ────────────────────────────────────────────────
   10  192.168.10.0/24  any            80,443   許可   社員のWeb閲覧
   20  192.168.10.0/24  192.168.30.10  445      許可   ファイルサーバー
   30  192.168.20.0/24  192.168.0.0/16 any      拒否   来客→社内は全遮断
   40  192.168.20.0/24  any            80,443   許可   来客のWeb閲覧のみ
   50  any             192.168.99.0/24 any      拒否   管理VLANへの接触禁止
  ────────────────────────────────────────────────
  999  any             any            any      拒否   ★暗黙の全拒否(最後の砦)

  ※ 順番が命。30 と 40 を入れ替えると、来客が社内に入れてしまう
  ※ 最後は必ず「全部拒否」。ここに到達したものは、想定外の通信
ルールの順番を間違えると、設定した意味がなくなります 上の例で、40番(来客のWeb許可)を30番より上に置くと、宛先が社内であっても80/443なら通ってしまいます。拒否ルールは、対応する許可ルールより必ず上。レビューでは、この順序を最優先で確認します。

ステートフルインスペクションという当たり前

現代のファイアウォールは、通信の状態を覚えています。内側から外へ出た通信に対する返事は、自動的に通します。これをステートフルインスペクションと呼びます。だからこそ「外から中への接続だけを拒否する」という設定が成立します。もしこれがなければ、返事の通信ごとに手で穴を開ける必要があり、実質的に運用できません。

VPN ── 公衆回線の上に、専用の通り道を作る

種類読み方用途特徴
リモートアクセスVPN在宅勤務者が社内へ端末にソフトを入れて接続。認証が要
拠点間VPN(サイト間)本社と支社を常時接続ルーター同士が張る。利用者は意識しない
IPsec-VPNアイピーセック拠点間で最も一般的IP層で暗号化。専用機器で処理
SSL-VPNエスエスエルブイピーエヌリモートアクセスブラウザやクライアントで手軽。443番を使うので通りやすい
IP-VPN・広域イーサ拠点間の閉域接続インターネットを通らない。事業者との契約が必要で高価
VPN機器の脆弱性は、いま最も狙われています 近年の大規模な情報漏えい事件の多くが、VPN機器の未更新の脆弱性から侵入されています。VPN機器はインターネットに直接面しているため、公開された脆弱性は即座に攻撃対象になります。ファームウェアの更新を、最優先の運用タスクとして計画に組み込むこと。これは知識ではなく、実務の姿勢の問題です。

境界防御の限界と、ゼロトラスト

従来の考え方は境界防御でした。「社内は安全、社外は危険。境目にファイアウォールを置いて守る」。しかし、この前提はすでに崩れています。

  • クラウドを使うため、守るべきデータが社内にない
  • 在宅勤務で、社員が社外から働く
  • 侵入されれば、社内は無防備(内部で自由に横移動される)

そこで登場したのがゼロトラストです。「何も信用せず、毎回確認する」という考え方で、次の3つが柱になります。

  1. すべてのアクセスを検証する ── 社内からでも、毎回認証する
  2. 最小権限にする ── 必要な人に、必要な範囲だけ
  3. 常に記録し、監視する ── 侵入される前提で、異常を早く見つける
誤解しやすい点 ゼロトラストは製品名ではなく、考え方です。「ゼロトラストを導入した」という言い方は、本来は正確ではありません。多要素認証、端末の健全性確認、通信の可視化、権限の最小化などを、積み重ねて近づいていくものです。そして、ファイアウォールが不要になるわけでもありません。

代表的な攻撃と、ネットワーク側の対策

攻撃読み方やられることネットワーク側の主な対策
DoS / DDoSドス/ディードス大量の通信でサービスを停止させる回線側での遮断、CDN、事業者の防御サービス
中間者攻撃ちゅうかんしゃこうげき通信を傍受・改ざんされるTLSの徹底、証明書の検証、公衆Wi-Fiでの業務制限
ARPスプーフィングLAN内で通信を横取りされるDynamic ARP Inspection、ポートセキュリティ
不正AP・野良AP偽のWi-Fiに接続させられる無線の監視、802.1X認証
ランサムウェア暗号化され、身代金を要求されるネットワーク分離、通信の最小化、バックアップの隔離
内部からの持ち出しデータを外部へ送られる外向き通信の制御、プロキシでの記録、DLP
ランサムウェア対策で、ネットワーク担当ができること 感染そのものを防ぐのは端末側の役目ですが、被害の範囲を決めるのはネットワーク設計です。全端末が全サーバーに自由に到達できる構成なら、1台の感染で全社が暗号化されます。VLANで分離し、通信を必要最小限に絞り、バックアップは通常のネットワークから切り離す。この3つで被害は桁違いに小さくなります。
一問一答
  1. ファイアウォールの設計原則「デフォルト拒否」とは何ですか。なぜそうするのですか。
  2. ステートフルインスペクションがあると、何が便利になりますか。
  3. 境界防御だけでは不十分とされるようになった理由を2つ挙げてください。
  4. ランサムウェアの被害範囲を小さくするために、ネットワーク設計でできることを挙げてください。
解答を見る
  1. 必要な通信だけを明示的に許可し、それ以外はすべて拒否する方式。危険なものを列挙する方式では必ず漏れが生じるため。
  2. 内側から出ていった通信の戻りを自動的に許可できるので、返信用のルールを個別に書く必要がなくなる。
  3. データがクラウドにあり社内に閉じていないこと、在宅勤務で社外からの利用が前提になったこと(加えて、侵入後の内部は無防備になること)。
  4. VLANによる分離、通信を必要最小限に絞ること、バックアップを通常のネットワークから隔離すること。
STEP 15 セキュリティ

クラウドのネットワーク ── 同じ原理を、画面の中で組む

目安 5日
このステップの到達点 ── クラウドのネットワーク用語を、これまで学んだ物理の世界の用語に翻訳できる。VPCを自分で設計し、なぜパブリックとプライベートに分けるのかを説明できる。

クラウドでも、原理は何も変わらない

安心してください。クラウドのネットワークは、これまで学んだことの言い換えです。ケーブルを挿す代わりに画面で設定するだけで、IPアドレスもサブネットもルーティングもファイアウォールも、まったく同じ考え方で動いています。

これまでの世界AWSAzureGoogle Cloud
自社のネットワーク全体VPC(ブイピーシー)VNet(ブイネット)VPC
VLAN/サブネットサブネットサブネットサブネット
ルーティングテーブルルートテーブルルートテーブルルート
インターネット回線の出口インターネットゲートウェイパブリックIPCloud NAT ほか
NAT(内から外だけ)NATゲートウェイNAT GatewayCloud NAT
ファイアウォール(機器ごと)セキュリティグループNSGファイアウォールルール
ファイアウォール(区画ごと)ネットワークACLNSG(サブネット単位)
ロードバランサELB / ALB / NLBLoad BalancerCloud Load Balancing
拠点間VPNSite-to-Site VPNVPN GatewayCloud VPN
専用線Direct ConnectExpressRouteCloud Interconnect

VPCの基本設計 ── パブリックとプライベート

最も基本的なVPC構成(2層構造)
  ┌──────────────── VPC  10.0.0.0/16 ────────────────┐
  │                                                        │
  │  ┌── パブリックサブネット 10.0.1.0/24 ──┐              │
  │  │  ・ロードバランサ                      │              │
  │  │  ・NATゲートウェイ                     │──▶ インターネット
  │  │  ・踏み台サーバー                      │      ゲートウェイ
  │  └──────────────┬─────────────┘              │
  │                       │                                │
  │  ┌── プライベートサブネット 10.0.2.0/24 ─┐              │
  │  │  ・アプリケーションサーバー             │              │
  │  │  ・データベース                        │              │
  │  │  (インターネットから直接到達できない)    │              │
  │  └──────────────────────────────┘              │
  └────────────────────────────────────────────────┘

  ・パブリック  … インターネットゲートウェイへの経路を持つサブネット
  ・プライベート … その経路を持たない。外に出るときだけNAT経由

  ★「公開が必要なものだけ、外から見える場所に置く」
    これは物理の世界でDMZを作るのと、まったく同じ考え方
パブリックとプライベートの正体 両者の違いは、ルートテーブルに「インターネットゲートウェイ宛の経路(0.0.0.0/0)」があるかどうかだけです。特別な魔法はありません。STEP 4で学んだデフォルトルートの話が、そのまま出てきています。

セキュリティグループとネットワークACL

比べる点セキュリティグループネットワークACL
適用先サーバー1台ごとサブネット全体
拒否ルール書けない(許可のみ)書ける(許可と拒否)
状態の記憶ステートフル(戻りは自動で許可)ステートレス(戻りも明示的に許可が必要
使い分け基本はこちらで制御する特定IPの遮断など、区画全体の防御に補助的に使う
初学者が必ずはまる罠 ネットワークACLはステートレスです。往きを許可しても、戻りの通信(動的ポート 1024〜65535)を別途許可しないと通信できません。「セキュリティグループは正しいのに繋がらない」というとき、これが原因のことが非常に多いです。

クラウド設計での定番の失敗

  • VPCのアドレス範囲を、社内と重ねてしまう ── あとで専用線やVPNで接続するとき、重複していると接続できません。将来つなぐ可能性があるなら、社内の設計台帳と突き合わせてから決めます
  • サブネットを小さく取りすぎる ── クラウドのサブネットは後から広げられません。/24 程度で余裕を持たせます
  • データベースをパブリックに置く ── 世界中からアクセス可能な状態になります。実際の情報漏えい事故の典型例です
  • 0.0.0.0/0 からのSSH(22番)を許可する ── 数分で総当たり攻撃が始まります。接続元IPを限定するか、踏み台やセッション管理機能を使います
一問一答
  1. パブリックサブネットとプライベートサブネットの違いは、技術的には何ですか。
  2. セキュリティグループとネットワークACLの違いを2つ挙げてください。
  3. VPCのアドレス範囲を決めるとき、社内のネットワークと重ねてはいけないのはなぜですか。
  4. データベースサーバーをプライベートサブネットに置く理由を説明してください。
解答を見る
  1. ルートテーブルにインターネットゲートウェイ宛のデフォルトルート(0.0.0.0/0)があるかどうか。
  2. 適用単位(サーバー単位かサブネット単位か)と、状態を記憶するかどうか(ステートフルかステートレスか)。ほかに拒否ルールが書けるかどうか。
  3. 将来VPNや専用線で接続したときにアドレスが衝突し、経路を正しく決められなくなるため。
  4. インターネットから直接到達できないようにして、攻撃対象になる面を減らすため。外部へ出る通信が必要な場合はNATゲートウェイ経由にする。
STEP 16 実務

実務で通用するために ── 設計書・変更管理・学び続け方

目安 継続
このステップの到達点 ── 技術以外に現場で求められることを知り、次に何をすればよいかが決まっている。ここまで来れば、あとは実務での経験が知識を仕上げてくれます。

技術力より先に信頼されるのは、この3つ

  1. 記録を残す人 ── 「なぜこの設定にしたか」が書いてある。半年後の自分と、次の担当者が助かる
  2. 事実と推測を分けて話す人 ── 「確認できたのはここまで、ここから先は推測です」と言える
  3. 止める判断ができる人 ── 「今日の作業は中止して、明日やり直します」と言える。無理に進めた作業が、いちばん大きな事故になります

ネットワーク作業の進め方

  • ① 要件何台つながるか、何を止めてはいけないか、予算と期限、将来の拡張
  • ② 設計構成図・アドレス設計表・VLAN一覧・機器一覧・ファイアウォールルール一覧
  • ③ 手順書作業を1手順ずつ。各手順に「確認方法」と「戻し方」を必ず書く
  • ④ 事前検証できる限り試す。本番と同じ機器がなくてもシミュレータで確認する
  • ⑤ 作業手順どおりに、1つずつ。変更前の設定を必ず保存してから触る
  • ⑥ 確認設計どおりに通るか、通ってはいけないものが遮断されているかも確認する
  • ⑦ 記録実際にやったこと、想定と違った点、次回への申し送りを残す
切り戻し手順のない作業は、やってはいけません 「うまくいかなかったら、どうやって元に戻すか」を書いていない作業計画は、承認されるべきではありません。深夜の作業で失敗し、戻し方が分からず朝を迎える——これが現場で最も恐れられる事態です。戻し方を書く時間は、作業時間の一部だと考えてください。
設定のバックアップ スイッチやルーターの設定は、変更のたびにファイルとして保存し、日付を付けて残します。機器が壊れたとき、この1ファイルがあるかないかで、復旧が30分か3日かに分かれます。可能なら、Gitで世代管理すると変更履歴が追えて理想的です(Git・GitHubの学習ページも参考にしてください)。

手を動かして学べる環境をつくる

Cisco Packet Tracer 無料

Cisco社の学習用シミュレータ。機器を画面上に並べ、ケーブルで結んで設定できる。VLANやルーティングの練習に最適。実機なしで学べる。

GNS3 / EVE-NG 無料

実際の機器のソフトウェアを動かせる、より本格的なエミュレータ。少し重いが、実機に近い挙動を試せる。

仮想マシン+Linux 無料

VirtualBoxなどで2台のLinuxを立て、ルーティングやファイアウォール(iptables)を設定してみる。手を動かす価値が非常に高い

中古の実機 数千円〜

中古のインテリジェントスイッチを1台買って、コンソールケーブルでつないでみる。実機の緊張感は、学習効果が違います

クラウドの無料枠 条件付き無料

AWSなどでVPCとサブネットを作り、サーバーを2台立てて通信させてみる。課金設定の確認だけは慎重に

自宅のネットワーク すでにある

自宅の構成図を描く。ルーターの管理画面を開き、DHCPの範囲やポート開放の設定を読んでみる。教材は目の前にあります

資格 ── 順番と、意味のある使い方

資格読み方位置づけ目安の学習時間
ITパスポートIT全般の入口。ネットワーク専門ではない50〜100時間
基本情報技術者IT技術者の基礎。ネットワーク分野も出題される150〜200時間
CCNAシスコシーシーエヌエーネットワーク実務の登竜門。機器の設定まで問われる150〜300時間
応用情報技術者設計や管理の視点が入る200〜300時間
ネットワークスペシャリスト国内最高難度。設計を論述で問われる300〜500時間
資格との付き合い方 資格は学習範囲を決めてくれる道具として優秀です。独学だと得意な分野ばかり読んでしまいますが、試験範囲があれば苦手も埋まります。一方で、資格だけでは実務はできません。「CCNAの勉強をしながら、自宅で同じ構成をPacket Tracerで組む」という進め方が、最も費用対効果が高い方法です。
これから半年、何をするか ── 具体的な計画例

1〜2か月目:土台をつくる

このページのSTEP 0〜8を通読し、コマンドをすべて自分の端末で実行します。とくにSTEP 3のサブネット計算は、紙に書いて50問以上解いてください。ここが速くなると、以降がすべて楽になります。

3〜4か月目:組んでみる

Packet Tracerで、STEP 10の構成図を再現します。VLANを3つ作り、L3スイッチでVLAN間ルーティングを設定し、片方から片方へpingが通ることを確認します。「通らない」状態から、自力で通るようにする経験が最大の学びです。

5〜6か月目:運用の視点を足す

自宅か検証環境で、Wiresharkによるキャプチャと、簡単な監視(pingの死活監視)を試します。並行してCCNAの学習を始めると、ここまでの実感と知識が結びつきます。

その先

実務に入ったら、自分が触ったネットワークの構成図を、自分の手で描き直すことを習慣にしてください。渡された図をなぞるのではなく、機器にログインして確認しながら描く。これに勝る訓練はありません。

一問一答
  1. 作業手順書に必ず含めるべき、2つの要素は何ですか。
  2. 機器の設定変更をする前に、必ずやっておくべきことは何ですか。
  3. ファイアウォールの設定変更後、「通ること」以外に確認すべきことは何ですか。
  4. 資格の勉強を、実務力につなげるにはどうすればよいですか。
解答を見る
  1. 各手順の「確認方法」と、失敗したときの「切り戻し手順」。
  2. 変更前の設定をファイルとして保存しておくこと(あわせて影響範囲と作業時間帯の合意)。
  3. 通ってはいけない通信が、意図どおり遮断されているかどうか。
  4. 学んだ構成を、シミュレータや検証環境で実際に組み、動かない状態から自力で解決する経験を積む。

実務チートシート

現場でとっさに確認したくなるものを、ここにまとめました

サブネットマスク早見表

CIDRサブネットマスク使える台数区切り幅ネットワークの先頭の例
/16255.255.0.065,53410.1.0.0
/20255.255.240.04,094第3が16刻み10.1.0.0 / 10.1.16.0 / 10.1.32.0
/22255.255.252.01,022第3が4刻み10.1.0.0 / 10.1.4.0 / 10.1.8.0
/24255.255.255.0254第3が1刻み192.168.10.0 / 192.168.11.0
/25255.255.255.128126128刻み…0 / …128
/26255.255.255.1926264刻み…0 / …64 / …128 / …192
/27255.255.255.2243032刻み…0 / …32 / …64 / …96 …
/28255.255.255.2401416刻み…0 / …16 / …32 …
/29255.255.255.24868刻み…0 / …8 / …16 …
/30255.255.255.25224刻み…0 / …4 / …8 …(ルーター間)
/32255.255.255.25511つのアドレスを指す

計算のこつ:256 − マスクの最後の数字 = 区切り幅。/26 なら 256 − 192 = 64 なので、0・64・128・192 が各ネットワークの先頭になります。この一手で、暗算がとても速くなります。

つながらないときの5分診断

やること成功したら失敗したら
1影響範囲を聞く(1人/フロア/全社/特定サイトのみ)調査対象が絞れる
2ipconfig /allip addr)でIPを確認次へ169.254ならDHCP異常で確定
3ping デフォルトゲートウェイLAN内は正常ケーブル・スイッチ・VLAN設定を疑う
4ping 8.8.8.8インターネットへL3疎通ありルーター・NAT・回線を疑う
5nslookup www.google.comDNSは正常DNSの問題で確定
6curl -I https://相手サービスも正常=端末やアプリ側の問題ポート遮断・相手側障害を疑う

この数字だけは覚える

128 64 32 16 8 4 2 1

2進数の各位。サブネット計算のすべての土台。

/24 = 254台

あわせて /26=62台、/30=2台。

22 / 53 / 80 / 443 / 445

SSH/DNS/HTTP/HTTPS/ファイル共有。

169.254.x.x

見えたらDHCP異常。切り分けの近道。

1・6・11

2.4GHz帯で干渉しないチャネル。

DORA

DHCPの4段階。Discover・Offer・Request・Ack。

用語集

意味があいまいなまま進みがちな言葉を集めました
プロトコル protocol
通信するとき、双方が守る約束ごと。形式と手順の取り決め。
パケット packet
ネットワーク層で扱う、小分けにされたデータの一かたまり。L2ではフレーム、L4ではセグメントと呼ぶ。
カプセル化 encapsulation
上の層のデータに、下の層のヘッダーを付け足していくこと。受信側は逆順に外していく。
ブロードキャスト broadcast
同じネットワーク内の全員に向けて送る通信。届く範囲をブロードキャストドメインという。
ユニキャスト/マルチキャスト
1対1で送るのがユニキャスト、特定のグループに送るのがマルチキャスト。
デフォルトゲートウェイ default gateway
宛先の経路が分からない通信を、まとめて任せる先のルーター。
サブネットマスク subnet mask
IPアドレスのどこまでがネットワーク部かを示す値。/24 のようにも書く(CIDR表記)。
ロンゲストマッチ longest match
経路表で複数の行に当てはまるとき、最も範囲の狭い行を選ぶ原則。
NAT/NAPT
プライベートアドレスをグローバルアドレスに変換すること。ポート番号も併せて変換するのがNAPT。
ポート番号 port number
1台の機器の中で、どのサービス宛かを示す番号。0〜65535。
3ウェイハンドシェイク
TCPが通信を始めるときの、SYN → SYN+ACK → ACK という3段階のやり取り。
MTU Maximum Transmission Unit
1回で送れるデータの最大サイズ。通常1500バイト。合っていないと大きな通信だけ失敗する。
TTL Time To Live
IPでは「あと何台のルーターを越えられるか」、DNSでは「答えを何秒覚えてよいか」を表す。
権威DNSサーバー
そのドメインの正式な答えを持っているサーバー。キャッシュサーバーは、そこから聞いてきた答えを一時保存する。
VLAN Virtual LAN
1台のスイッチを論理的に複数のLANに分ける機能。VLAN間の通信にはルーティングが必要。
トランクポート trunk port
複数のVLANの通信を、1本のケーブルにまとめて流すポート。スイッチ同士の接続に使う。
PoE Power over Ethernet
LANケーブルを通じて電力も供給する仕組み。無線APやIP電話、カメラに使う。
冗長化 redundancy
機器や経路を二重にして、片方が故障しても止まらないようにすること。
スパニングツリー STP
配線が環状になっても、片方を論理的に遮断してループを防ぐ仕組み。
ステートフル/ステートレス
通信の状態を覚えているかどうか。覚えていれば、戻りの通信を自動で許可できる。
DMZ 非武装地帯
外部に公開するサーバーを置く、社内でも社外でもない中間の区画。
ゼロトラスト zero trust
社内・社外を問わず、すべてのアクセスを毎回検証するという考え方。製品名ではない。
帯域とレイテンシ
帯域は1秒に運べる量(太さ)、レイテンシは届くまでの時間(遠さ)。太くても遠ければ体感は遅い。
ベストエフォート best effort
「最大限の努力はするが、速度は保証しない」という契約形態。一般的な光回線はこれ。

よくある質問

学び始めるときにつまずきやすい点
数学が苦手です。サブネット計算はできるようになりますか?

なります。必要なのは足し算と、8つの数字(128・64・32・16・8・4・2・1)の暗記だけです。難しく見えるのは、2進数という表記に慣れていないからで、能力の問題ではありません。

おすすめは、紙に50問解くことです。「/26 の区切りは?」「10.0.5.200/27 のネットワークアドレスは?」といった問題を自分で作り、答え合わせは ipcalc やPythonで行います。3日ほどで、ほぼ暗算になります。ここを飛ばすと後がずっと苦しいので、唯一、時間をかける価値のある反復練習です。

実機がありません。それでも実務レベルまで学べますか?

学べます。無料のシミュレータ(Cisco Packet Tracer)で、VLAN、ルーティング、アクセス制御まで一通り練習できます。加えて、お使いのパソコン自体が優秀な教材です。ipconfigpingtracertnslookup は今すぐ打てます。

ただし、実機でしか身につかない感覚もあります(コンソール接続、ケーブルの取り回し、ラックの物理作業など)。中古のスイッチは数千円で手に入るので、余裕があれば1台用意すると学習の質が上がります。

クラウドの時代に、ネットワークの知識は必要ですか?

むしろ必要性は上がっています。クラウドを使うと、サーバーの設置作業はなくなりますが、VPC、サブネット、ルートテーブル、セキュリティグループの設定はすべて利用者の責任になります。設定を間違えれば、データベースが世界中に公開されます。

そしてクラウドの設定画面に並ぶ言葉は、このページで学ぶ用語そのものです。物理のネットワークを理解している人ほど、クラウドの習得が速いというのが実感です。順番としては、基礎を先に学ぶのが結局の近道です。

用語が覚えられません。どうすればよいですか?

略語のまま覚えようとしないでください。「誰が、何をする役目か」を日本語の一文にするのがこつです。「DHCP=つないだ端末に住所を配る係」「ARP=同じLAN内で、IPからMACを聞き出す係」というように。

そのうえで、読み方を必ず声に出して確認してください。読み方があいまいだと、会話でも検索でも使えません。このページのふりがな機能は、まさにそのために付けています。最初のうちはONのまま読み進めてください。

未経験からネットワークの仕事に就けますか?

就ける分野です。ネットワークは運用・監視の現場が広く、入口が比較的多い領域です。多くの人が、監視業務や一次対応から始めて、構築、設計へと進んでいきます。

採用の場でよく見られるのは、資格の有無だけではありません。「切り分けの手順を説明できるか」が問われます。このページのSTEP 12を、自分の言葉で話せるように準備しておいてください。加えて、自宅で組んだ構成を説明できると強い材料になります。

実務でいちばん多いトラブルは何ですか?

体感として多い順に、①設定の変更ミス(直前に誰かが何かを変えている)、②DNSの問題、③物理的な問題(ケーブルの抜け、接触不良、電源)、④機器やソフトの不具合・容量不足、⑤回線事業者側の障害です。

①が最多である以上、対応の第一声は「直前に何か変更はありませんでしたか」になります。技術的な調査を始める前に、この一言を必ず入れてください。半分近くはここで解決します。

これから学ぶ方・指導される方へ

このページは、ネットワークを初めて学ぶ方が、用語の暗記からではなく「データが運ばれる順番」から理解できるように構成しています。暗記から入ると、「知っているのに切り分けができない」状態になりやすいためです。まずは通読し、二周目でコマンドを実行し、三周目で一問一答を使って確認する使い方をおすすめします。

指導される立場の方へ。学習者が詰まる場所は、経験上ほぼ決まっています。①サブネット計算(STEP 3)、②MACとIPの役割の違い(STEP 1〜2)、③DNSの階層構造(STEP 6)の3か所です。ここに時間を配分し、それ以外は先に進みながら繰り返し戻る形にすると、途中で止まりにくくなります。

掲載しているコマンドは、原則としてご自身の端末や検証環境で実行してください。会社のネットワークで、パケットキャプチャやポートスキャンにあたる操作を無断で行わないでください。技術的には簡単でも、規程違反や法令上の問題になり得ます。必ず責任者の許可を得たうえで実施してください。