STEP 0
準備
株を買う前に ── お金の置き場所を決める
目安 1週間
このステップの到達点 ── 「自分は今、投資を始めてよい状態か」を自分で判断できる。ここを飛ばして始めた人のほとんどが、下落したときに耐えられず売ってしまいます。技術より先に、順番の問題です。
株とは何か ── 会社の一部を持つということ
会社が新しい工場を建てたい、人を雇いたいと思ったとき、お金が要ります。そのお金を出してくれた人に「あなたはこの会社の一部の持ち主です」と示すために発行するのが株式(かぶしき)です。株を持っている人を株主といいます。
銀行からの借金とちがい、会社は株主にお金を返す義務がありません。そのかわり株主は、会社がもうかったときに配当を受け取ったり、会社の価値が上がったときに株を高く売って利益を得たりできます。会社がつぶれれば、その株の価値はほぼゼロになります。返ってこない可能性を引き受けるかわりに、うまくいったときの取り分が大きい ── これが株式の本質です。
投資と投機のちがい
投資は、会社が事業でもうけを積み上げていくことに参加して、その成長の分けまえを受け取ろうとする行為です。時間が味方になります。
投機は、値段の上下だけをねらって短い時間で売り買いする行為です。誰かが得をした分だけ誰かが損をする、席の取り合いに近い性質を持ちます。どちらが良い悪いではありませんが、初学者が最初に立つべき場所は投資のほうです。理由は単純で、投機は判断の回数が多く、経験の浅い人ほど不利になるからです。
始める前に確認する3つのこと
- 生活費の6か月分が、すぐ引き出せる形で貯まっているか。病気や失業のときに株を売らずに済む備えです。ここが空のまま投資を始めると、いちばん株価が安いときに現金が必要になり、損を確定させることになります。
- 金利の高い借金が残っていないか。年15%の借金を抱えたまま年5%の運用をしても、差し引きでは毎年10%ずつ損をしています。返済が先です。
- 5年以上使う予定のないお金か。1年後に使う予定のお金を株に入れてはいけません。株価は数年単位で3割・4割下がることが実際にあります。
投資に回してよい金額の考え方
# 手取り月収 25万円 の人の例
生活費 ................ 18万円 / 月
生活防衛資金の目標 ..... 18万円 × 6か月 = 108万円
貯金が 30万円 のとき → まず貯金。投資はまだ
貯金が 120万円 のとき → 108万円を残し、残りと毎月の余りから開始
毎月の投資額の目安 ..... 手取りの 5% 〜 15% から
結論「余ったお金」ではなく「使う予定のないお金」で始める。
金額の大小より、続けられる金額かどうかが重要。
いちばん多い失敗 「今が買いどきだ」と急かされて、準備のないまま始めてしまうことです。株価が上がっているニュースが増えるのは、たいてい多くの人がすでに買った後です。あせらせる情報からは、いったん離れてください。チャンスを逃すことより、退場することのほうがはるかに痛手です。
練習問題
生活費が月20万円、貯金が90万円、来年3月に自動車購入で60万円を使う予定がある人がいます。この人が今すぐ投資に回してよい金額はいくらでしょうか。
解答を見る
生活防衛資金の目安が 20万円 × 6 = 120万円。貯金90万円はそれに届いておらず、さらに来年60万円の支出予定もあります。したがって今回すべき金額は0円で、まずは貯蓄を優先するのが順当です。
※ 「投資をしないという判断」も立派な判断です。始めないことでお金が減ることはありません。
STEP 1
基礎
株式のしくみ ── 株価・時価総額・市場
目安 1週間
このステップの到達点 ── 株価と会社の大きさの関係が説明でき、「株価が高い会社=大きい会社」ではないと分かる。時価総額という言葉を自分の言葉で説明できる。
株価だけを見ても、会社の大きさは分からない
株価は「1株あたりの値段」にすぎません。会社が株を何枚に分けて発行しているかは会社ごとにちがうため、株価が高いか安いかだけでは、会社の規模も割安さも判断できません。会社ぜんたいの値段を表すのが時価総額(じかそうがく)です。
時価総額 = 株価 × 発行済株式数
# A社
株価 .......... 5,000円
発行済株式数 ... 1,000万株
時価総額 = 5000 × 10,000,000 = 500億円
# B社
株価 .......... 500円
発行済株式数 ... 20億株
時価総額 = 500 × 2,000,000,000 = 1兆円
# 株価はA社が10倍高いが、会社の大きさはB社が20倍
覚えること「株価が安い株=お買い得」ではない。
比べるときは、必ず時価総額か、1株あたりの利益で比べる。
株はどこで売り買いされるのか
日本の株式は、主に東京証券取引所(東証)という市場で取引されています。私たちは東証に直接注文を出せないので、証券会社を通して注文を取り次いでもらいます。東証には現在、プライム・スタンダード・グロースという3つの区分があり、大まかには「規模が大きく世界の投資家も見る会社」「国内で安定して事業を行う会社」「これから成長をめざす会社」という性格の違いがあります。
市場に株を出すことを上場(じょうじょう)といいます。上場するには決算をきちんと公開する義務などがあり、この「情報が公開されていること」が、私たちが会社を調べられる理由です。逆に、条件を満たせなくなると上場廃止となり、市場で売れなくなることがあります。
取引できる時間と、値段の決まり方
東証の取引時間は、午前9時〜11時30分(前場)と午後12時30分〜15時30分(後場)です。株価は、この時間内で「買いたい人」と「売りたい人」の希望価格が一致したところで、次々と決まっていきます。売買が成立することを約定(やくじょう)といいます。
1日で株価が動ける幅には上限があり、これを値幅制限といいます。上限まで上がることをストップ高、下限まで下がることをストップ安と呼びます。急な情報で価格が壊れるのを防ぐしくみです。
板(いた)を見てみよう 証券会社のアプリには、いくらで何株の買い注文・売り注文が並んでいるかを示す「板」という画面があります。株価は誰かが決めているのではなく、この注文の重なりで決まっていることが、板を見ると一目で分かります。口座を作ったら、まず板を5分間ながめてみてください。
1単元=100株 日本株は原則100株単位で売買します。株価2,000円の会社を買うには 2,000 × 100 = 20万円が必要です。ただし多くのネット証券には、1株から買える単元未満株のサービスがあり、数千円から始められます。学習の最初は、こちらのほうが向いています。
練習問題
株価1,200円、発行済株式数が5,000万株の会社があります。この会社の時価総額はいくらですか。また、この株を1単元買うにはいくら必要ですか(手数料は考えない)。
解答を見る
計算
時価総額 = 1,200円 × 50,000,000株 = 600億円
1単元 = 1,200円 × 100株 = 120,000円
STEP 2
基礎
証券口座を開き、注文のしかたを覚える
目安 1週間
このステップの到達点 ── 口座の種類のちがいが分かり、成行と指値を使い分けられる。実際に注文画面を開いて、発注する直前まで操作できる。
口座の種類 ── 最初に選ぶのは3つだけ
※ NISA口座は、すべての金融機関を通じて1人1口座までです。金融機関の変更はできますが、手続きに時間がかかります。
口座開設に必要なもの
- マイナンバーが確認できる書類(マイナンバーカードなど)
- 本人確認書類(運転免許証など)
- 本人名義の銀行口座
ネット証券なら、スマホで書類を撮影して申し込み、数日で開設できるのが一般的です。未成年でも親権者の同意があれば開設できる証券会社があります(取り扱いは会社ごとに異なります)。
成行注文と指値注文
注文のしかたは、まずこの2つを覚えれば十分です。
- 成行(なりゆき)注文 ── 値段を指定せず「いくらでもいいから買う/売る」。ほぼ確実に約定しますが、思った値段と大きくずれることがあります。
- 指値(さしね)注文 ── 「1,000円以下なら買う」「1,200円以上なら売る」と値段を指定する。値段は守られますが、約定しないまま終わることがあります。
成行と指値のちがい(現在値 1,000円のとき)
# 成行で 100株 買う
売り注文 1,001円 に 30株
売り注文 1,005円 に 70株
→ 30株を1,001円、70株を1,005円で約定
平均取得単価 = (1,001×30 + 1,005×70) ÷ 100 = 1,003.8円
# 指値 990円 で 100株 買う
→ 株価が990円以下に下がらなければ、いつまでも買えない
→ そのかわり、991円で買ってしまうことは絶対にない
使い分けの目安売買の少ない銘柄・急な場面 → 指値のほうが安全
どうしても確実に売買したい → 成行
成行注文の事故 1日の売買が極端に少ない銘柄に成行で注文を出すと、数%〜十数%も離れた値段で約定してしまうことがあります。初学者はまず指値から始めてください。注文を出したあと約定しなければ、当日の取引終了時に自動的に取り消されます(注文の有効期間は証券会社で設定できます)。
受け渡しには数日かかる 株を売っても、その代金がすぐ引き出せるわけではありません。日本株では現在、約定した日を含めて3営業日目(T+2)に決済されるのが原則です。この受渡日のルールは配当や優待の権利にも関わり、将来短縮される可能性もあるため、取引の前に証券会社の案内を確認する習慣をつけてください。
練習問題
ある会社の株価が今日1,500円です。「1,400円まで下がったら買いたい」と考えているとき、どの注文を出しますか。また、その注文の弱点は何ですか。
解答を見る
指値1,400円の買い注文を出します。弱点は、株価が1,400円まで下がらずに上昇し続けた場合、いつまでも買えないことです。「1円の差で買い逃す」ことは実際によく起こります。指値は「安く買える保証」ではなく「高く買わない約束」だと理解しておいてください。
STEP 3
基礎
株価は何で動くのか ── 需給・業績・金利・為替
目安 1〜2週間
このステップの到達点 ── 「なぜ今日は株価が下がったのか」というニュースの説明を、自分でも組み立てられる。株価は業績の予想を織り込んで動くという考え方が分かる。
いちばん根本の原理は「買いたい人と売りたい人の数」
株価が動く直接の理由は、いつでも1つです。買いたい人が売りたい人より多ければ上がり、逆なら下がります。難しい説明はすべて、その手前にある「なぜ買いたい人が増えたのか」の話です。主な理由は次の4つに整理できます。
① 業績 ── 会社がもうかっているか
会社の利益が増えれば、配当が増えたり会社の価値が高まったりするので、買いたい人が増えます。ここで大事なのは、株価は「今の業績」ではなく「これからの業績の予想」で動くということです。決算で過去最高益を発表したのに株価が下がることがあるのは、市場がそれ以上の数字を予想していたからです。この「予想がすでに株価に入っている」状態を織り込み済みといいます。
② 金利 ── お金を借りる値段
金利が上がると、①企業は借入の利息が増えて利益が減りやすくなり、②預金や債券でも安全に利息が得られるようになるため、リスクのある株の魅力が相対的に下がります。そのため一般に、金利上昇は株価にとって逆風とされます(金利上昇で利益が増えやすい銀行など、例外もあります)。
③ 為替 ── 円安と円高
1ドル=150円から160円になることを円安といいます(円の価値が下がる)。海外で売っている輸出企業は、同じ1ドルの売上がより多くの円になるため利益が増えやすくなります。逆に、原材料を輸入している企業や電力会社などはコストが上がり、不利になります。
円安が輸出企業の利益に与える影響
# 海外で 1台 10,000ドル の製品を 1万台 売る会社
1ドル = 150円 のとき
売上 = 10,000 × 10,000 × 150 = 1兆5,000億円
1ドル = 160円 のとき
売上 = 10,000 × 10,000 × 160 = 1兆6,000億円
# 販売台数も値段も変わっていないのに、売上が1,000億円増える
読み取ること「円安 → 輸出企業に追い風、輸入企業に逆風」
ただし、部品を輸入して製品を輸出する会社も多く、実際は打ち消し合う。
会社ごとに、決算資料の「為替感応度」を見るのが正確。
④ 景気と市場全体の空気
景気が良くなれば人はものを買い、企業の売上が増えます。また、戦争・災害・金融不安などが起きると、多くの人が同時に「安全な資産に移そう」と考えるため、良い会社の株もまとめて下がります。自分の持っている会社に何も起きていなくても株価が下がることは、ごく普通に起こります。
効率的市場という考え方 公開されている情報は、すでに多くの投資家が読み、株価に反映されています。だから「良い会社だから上がる」とは限りません。上がるのは市場の予想を上回ったときです。この考え方を知っておくと、「この会社は有名で人気だから儲かるはず」という短絡を避けられます。
練習問題
ある会社が「今期の利益は前年より20%増えました」と発表したのに、翌日の株価は8%下がりました。考えられる理由を2つ挙げてください。
解答を見る
- 市場は30%増を予想していた(=20%増は期待外れだった)。
- 同時に発表された来期の見通しが弱かった。株価は将来を見て動くため、過去の実績より来期予想のほうが効くことがよくあります。
※ ほかにも「材料出尽くし(発表前にすでに上がっていた)」「市場全体が下げていた」なども正解です。
STEP 4
基礎
配当・株主優待・株式分割 ── 持っていると起きること
目安 1週間
このステップの到達点 ── 配当利回りを計算でき、権利落ちのしくみが説明できる。「優待をもらうと得」という話の落とし穴が分かる。
配当 ── 利益の分けまえ
会社が稼いだ利益の一部を株主に配るお金を配当金といいます。日本では年1回か2回が一般的です。株価に対して1年でどれだけ配当がもらえるかを表すのが配当利回りです。
配当利回り = 1株あたり年間配当 ÷ 株価 × 100
# C社
1株あたりの年間配当 ... 60円
株価 ................ 2,400円
配当利回り = 60 ÷ 2,400 × 100 = 2.5%
# 100株(1単元)持っていた場合の年間配当
60円 × 100株 = 6,000円(税引前)
税金 20.315% を引くと → 6,000 × 0.79685 = 約4,781円
計算結果配当利回り 2.5% / 年間の手取り配当 約4,781円
※ NISA口座で受け取る場合は、この税金がかからない(STEP 9)
配当を利益の何%から出しているかを配当性向といいます。配当性向が100%を超えている会社は、稼いだ以上に配っている状態で、長くは続けられません。利回りの高さだけで選ぶと、減配(配当が減ること)で株価も配当も同時に失うことがあります。
権利確定日と権利落ち
配当や優待を受け取るには、会社が定めた権利確定日の時点で株主名簿に名前が載っている必要があります。株の受け渡しには数営業日かかるため、実際には権利確定日の数営業日前(権利付最終日)までに買っておく必要があります。
そして翌営業日(権利落ち日)には、配当をもらう権利がなくなった分だけ、株価はおおむね配当額に相当するだけ下がります。これを権利落ちといいます。
「配当直前に買えば得」ではない 配当60円をもらう権利がついた最終日の終値が2,400円なら、翌日の株価はおおよそ2,340円あたりから始まります。配当をもらった分だけ株価が下がるので、直前に買っても基本的に得はしません(さらに税金も引かれます)。配当は「短期でもうける手段」ではなく、長く持つ人が受け取る果実だと考えてください。
株主優待
日本独特の制度で、自社の商品券やサービスの割引券などがもらえるものです。生活で実際に使うものであれば実質的な利回りを高めますが、使わない優待に価値はありません。また、優待は会社の判断でいつでも廃止でき、廃止の発表で株価が大きく下がることもあります。優待だけを理由に買うのは避けてください。
株式分割
1株を2株、3株などに分けることです。会社の価値は変わりません。1株2,000円の株が1対2で分割されると、株価は約1,000円になり、持っている株数は2倍になります。値段が下がることで少額でも買いやすくなるため、株主を増やしたい会社が行います。「分割するから得」ではなく、ケーキの切り分け方が変わっただけです。
練習問題
株価1,600円、1株あたり年間配当48円の会社があります。(1)配当利回りは何%ですか。(2)この会社が1対4の株式分割を行った直後、理論上の株価と1株配当はいくらになりますか。
解答を見る
計算
(1) 48 ÷ 1,600 × 100 = 3.0%
(2) 株価 1,600 ÷ 4 = 400円
1株配当 48 ÷ 4 = 12円
配当利回り 12 ÷ 400 × 100 = 3.0% ← 変わらない
※ 分割しても利回りは変わりません。ここが「分割は中身が変わらない」ことの証拠です。
STEP 5
応用
決算書の読み方の入口 ── 会社を数字で見る
目安 2週間
このステップの到達点 ── 損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書の役割を1行ずつ説明でき、売上・営業利益・純利益のちがいが分かる。
3つの表を、それぞれ一言で
損益計算書(PL)── 上から下へ引いていく表
PLは、いちばん上の売上から費用を順番に引いていって、最後に手元に残る利益を出す表です。段階ごとに名前がついています。
損益計算書の流れ(単位:億円)
売上高 ................................ 1,000
- 売上原価(仕入・製造にかかった費用)... 600
= 売上総利益(粗利) ................... 400
- 販売費及び一般管理費(人件費・広告など) 280
= 営業利益 ← 本業でどれだけ稼いだか ..... 120
± 営業外の収益・費用(利息・為替差損益).. -10
= 経常利益 ............................. 110
± 特別利益・特別損失(土地の売却など).... -20
- 法人税など .......................... 27
= 当期純利益 ← 最終的に残ったもうけ ..... 63
いちばん大事な行営業利益 = 本業の実力。まずここを何年分か並べて見る。
純利益は、土地の売却などの一時的な要因で大きく動くことがある。
売上総利益 ÷ 売上高を粗利率、営業利益 ÷ 売上高を営業利益率といいます。営業利益率は業種によってまったく違うので、比べるのは同じ業種の会社どうしにしてください。
貸借対照表(BS)── 左と右が必ず一致する表
左に資産(持っているもの)、右に負債(返す義務があるもの)と純資産(返さなくてよい自前のお金)が並び、左右の合計は必ず一致します。会社がつぶれにくいかどうかを見る表です。
貸借対照表と自己資本比率(単位:億円)
【資産】1,000 【負債】 600
現金 200 短期借入 150
売掛金 150 買掛金 200
在庫 150 長期借入 250
建物・設備 500 【純資産】400
自己資本比率 = 400 ÷ 1,000 × 100 = 40%
見方自己資本比率が高いほど、借金への依存が小さく、不況に耐えやすい。
目安は40%以上と言われるが、銀行・不動産など業種によって水準が大きく違う。
キャッシュフロー計算書(CF)── 利益と現金は別物
商品を売っても、代金の入金が3か月後なら、利益は出ていても現金はまだありません。この「利益は黒字なのに現金が尽きる」状態が黒字倒産です。CFは、現金の増減を3つに分けて示します。
- 営業CF ── 本業で入ってきた現金。ここが継続してプラスであることが最重要です。
- 投資CF ── 設備や会社の買収に使ったお金。成長中の会社はふつうマイナスです。
- 財務CF ── 借入・返済・配当・自社株買いなど、資金調達に関する出入り。
どこで見られるか 会社のホームページの「IR情報」「投資家の皆さまへ」というページに、決算短信や決算説明資料が無料で公開されています。慣れないうちは、文字ばかりの決算短信より、図が多い決算説明資料から読むのがおすすめです。
練習問題
売上高500億円、売上原価350億円、販管費100億円の会社があります。(1)営業利益はいくらですか。(2)営業利益率は何%ですか。
解答を見る
計算
(1) 500 - 350 - 100 = 50億円
(2) 50 ÷ 500 × 100 = 10%
STEP 6
応用
指標で比べる ── PER・PBR・ROE
目安 2週間
このステップの到達点 ── PER・PBR・ROEを自分で計算でき、「割安に見えるのには理由がある」という視点を持てる。
PER ── 利益の何年分の値段がついているか
PER(株価収益率)は、株価が1株あたり利益(EPS)の何倍かを表します。「今の利益が続くとして、投資額を回収するのに何年かかるか」と読み替えると分かりやすくなります。
EPS と PER
# D社
当期純利益 ....... 60億円
発行済株式数 ..... 3,000万株
株価 ............. 1,600円
EPS(1株あたり利益) = 6,000,000,000 ÷ 30,000,000 = 200円
PER = 株価 ÷ EPS = 1,600 ÷ 200 = 8倍
# 同じ業種のE社が PER 20倍 なら、D社のほうが利益に対して安い
注意PERが低い=買い、ではない。
低いのは「今後、利益が減ると市場が見ている」からかもしれない。
必ず、なぜ低いのかを調べる。
PBR ── 会社の解散価値と比べてどうか
PBR(株価純資産倍率)は、株価が1株あたり純資産(BPS)の何倍かです。PBRが1倍なら、株価と「会社が今持っている正味の財産」がちょうど同じ、という意味になります。
BPS と PBR
# D社(つづき)
純資産 ........... 400億円
発行済株式数 ..... 3,000万株
BPS(1株あたり純資産) = 40,000,000,000 ÷ 30,000,000 = 約1,333円
PBR = 1,600 ÷ 1,333 = 約1.2倍
PBRが1倍を下回っている会社は、市場から「持っている財産をうまく使えていない」「これから財産を減らす」と見られている状態です。日本では、これを改善するよう取引所から要請が出され、多くの会社が資本の使い方を見直しています。PBRが低いこと自体は、割安の証明ではなく、問いかけの入口です。
ROE ── 預かったお金でどれだけ稼いだか
ROE(自己資本利益率)は、株主が出したお金に対して、1年でどれだけの利益を生んだかを示します。会社の「稼ぐ効率」を見る指標で、投資家が最も重視するものの1つです。
ROE と3つの分解
ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100
= 60億 ÷ 400億 × 100 = 15%
# ROEは3つに分解できる(デュポン分解)
ROE = 売上高純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
(もうけの厚さ) (資産の使い方) (借金の効かせ方)
# 借金を増やしてもROEは上がる。数字だけを見ず、中身を見ること。
目安ROE 8%以上が1つの目安とされることが多い。
ただし業種差が大きく、借入の多さでも変わるため、
同業他社との比較と、数年分の推移で見る。
3つの関係 PER・PBR・ROEには PBR = PER × ROE(ROEを小数で計算)という関係があります。上のD社なら 8倍 × 0.15 = 1.2倍 で、実際のPBRと一致します。「稼ぐ効率が高い会社ほど、純資産に対して高い値段がつく」ことが式から読み取れます。
指標の落とし穴 ① PERは赤字の会社では計算できません。② 決算発表の直後は、指標が古い数字のまま表示されていることがあります。③ 情報サイトによって「実績値」か「予想値」かが異なります。必ず、いつ時点の・どの数字を使っているのかを確認してください。
練習問題
株価3,000円、EPS150円、BPS2,500円の会社があります。(1)PERとPBRを求めてください。(2)この会社のROEはおよそ何%ですか。
解答を見る
計算
(1) PER = 3,000 ÷ 150 = 20倍
PBR = 3,000 ÷ 2,500 = 1.2倍
(2) ROE = EPS ÷ BPS × 100 = 150 ÷ 2,500 × 100 = 6%
(検算: PBR = PER × ROE = 20 × 0.06 = 1.2 ✓)
STEP 7
応用
チャートの見方 ── ローソク足・移動平均線・出来高
目安 1〜2週間
このステップの到達点 ── ローソク足1本から4つの値段を読み取れる。移動平均線が何の平均かを説明できる。そしてチャートで未来は分からないと知っている。
ローソク足 ── 1本に4つの情報
ローソク足は、ある期間(1日、1週間など)の値動きを1本にまとめた図です。日本で生まれ、世界中で使われています。1本から次の4つが読み取れます。
- 始値(はじめね) ── その期間の最初についた値段
- 終値(おわりね) ── 最後についた値段
- 高値(たかね) ── いちばん高かった値段
- 安値(やすね) ── いちばん安かった値段
始値より終値が高い(値上がりした)足を陽線、低い(値下がりした)足を陰線といいます。四角い部分を実体、上下に伸びた線をヒゲと呼びます。
ローソク足の読み方
│ ← 上ヒゲ(高値 1,080円)
┌─┴─┐
│ │ ← 実体(始値 1,000円 → 終値 1,050円)= 陽線
└─┬─┘
│ ← 下ヒゲ(安値 980円)
# 上ヒゲが長い = 一度上がったが、売られて押し戻された
# 下ヒゲが長い = 一度下がったが、買われて戻した
読み取れることヒゲは「その値段で戦って、負けた側がいた」あとです。
ただし、1本のかたちだけで先を当てることはできません。
移動平均線 ── ならして流れを見る
直近の一定期間の終値を平均して線でつないだものです。日々の細かい上下をならして、大きな流れを見やすくします。
5日移動平均線の計算
# 直近5日の終値
1日目 1,000円 / 2日目 1,020円 / 3日目 980円
4日目 1,050円 / 5日目 1,100円
5日移動平均 = (1000 + 1020 + 980 + 1050 + 1100) ÷ 5 = 1,030円
# 6日目の終値が1,150円なら、いちばん古い1日目を外して計算し直す
(1020 + 980 + 1050 + 1100 + 1150) ÷ 5 = 1,060円 ← 線が上を向く
短い期間の線(5日・25日)と長い期間の線(75日・200日)を重ねて、向きと位置関係を見るのが基本です。ただし、移動平均線は過去の平均であり、未来を予測する装置ではありません。線が上向きなのは「これまで上がってきた」という事実の確認にすぎません。
出来高 ── 何株売買されたか
チャートの下にある棒グラフが出来高です。株価の動きに出来高が伴っているかどうかで、その動きに多くの参加者が関わったのかが分かります。出来高が極端に少ない銘柄は、売りたいときに売れないことがあるため、初学者は避けるのが無難です。
テクニカル分析との付き合い方 チャートの形から売買を判断する手法をテクニカル分析といいます。「この形が出たら上がる」といった説明を多く見かけますが、将来の株価を安定して当てられる形は確認されていません。チャートは「今どのあたりにいるか」を知る地図として使い、売買の根拠は事業と数字(STEP 5・6)に置いてください。地図は現在地を教えますが、行き先までは決めてくれません。
練習問題
始値1,200円、終値1,150円、高値1,260円、安値1,140円の1日でした。(1)この足は陽線・陰線のどちらですか。(2)上ヒゲと下ヒゲはそれぞれ何円分ですか。
解答を見る
計算
(1) 終値 1,150 < 始値 1,200 → 陰線
(2) 上ヒゲ = 高値 1,260 - 始値 1,200 = 60円
下ヒゲ = 終値 1,150 - 安値 1,140 = 10円
(陰線では 上ヒゲ=高値−始値、下ヒゲ=終値−安値)
STEP 8
応用
リスクと分散 ── 投資信託・ETF・指数
目安 2週間
このステップの到達点 ── 「リスク」を損という意味ではなく値動きの振れ幅として理解し、分散がなぜ効くのかを説明できる。インデックスファンドの中身が分かる。
リスクとは「危険」ではなく「振れ幅」
日常語のリスクは「危ない」という意味ですが、投資の世界では結果がどれだけばらつくかを指します。リスクが大きい商品は、大きく下がる可能性と大きく上がる可能性の両方を持っています。そして、リスクを取らずに高い利益だけを得る方法はありません。「元本保証で高利回り」をうたうものは、まず詐欺です(STEP 11)。
分散が効く理由
1社だけに投資すると、その会社の不祥事や倒産で資産が一度に消えます。値動きの理由が異なる複数の資産に分けておけば、片方が下がっても、もう片方がそれほど下がらないため、全体の振れ幅が小さくなります。期待できる利益をあまり減らさずに振れ幅だけ減らせるのが、分散が「唯一のただ飯」と呼ばれる理由です。
1社集中と分散のちがい(極端な例)
# 100万円を投資する。ある年、1社が倒産して価値ゼロになった
【1社に集中】
その1社が倒産 → 100万円が 0円(-100%)
【20社に5万円ずつ分散】
1社が倒産(-5万円)、残り19社が平均+5%(+4.75万円)
→ 100 - 5 + 4.75 = 99.75万円(-0.25%)
# 同じ出来事でも、致命傷になるかどうかが変わる
分散の3つの方向① 銘柄の分散 … 複数の会社に分ける
② 地域の分散 … 日本・米国・その他の国に分ける
③ 時間の分散 … 一度に買わず、時期をずらして買う(STEP 13)
投資信託とETF ── まとめて買う道具
何十社にも自分で分散するのは大変です。そこで、多くの人からお金を集めて運用会社がまとめて投資し、その持ち分を小口に分けたものが投資信託です。これを株式市場に上場させ、株と同じように売買できるようにしたものがETF(上場投資信託)です。
- インデックス型 ── 日経平均やS&P500などの指数と同じ動きを目指す。手数料が安い。
- アクティブ型 ── 運用者が銘柄を選び、指数を上回ることを目指す。手数料が高い。
長期では、手数料を差し引いた後にインデックス型を上回り続けるアクティブ型は多くないことが、各国のデータで繰り返し示されています。初学者が最初に理解すべきは、低コストのインデックス型です。
指数(インデックス)を知る
※ 指数の構成銘柄や算出ルールは見直されることがあります。実際に商品を選ぶ際は、その投資信託がどの指数に連動するのかと信託報酬(年間の手数料)を必ず目論見書で確認してください。
手数料の差は年々効いてくる 信託報酬が年0.1%の商品と年1.5%の商品では、差は年1.4%です。100万円なら1年で1.4万円ですが、20年間・複利で考えると差はずっと大きくなります。将来の利益は誰にも分かりませんが、手数料は確実に分かります。確実に分かるものから確認するのが合理的です。
練習問題
「日経平均が上がった=日本のすべての会社の株が上がった」と言えるでしょうか。理由も答えてください。
解答を見る
言えません。日経平均は225銘柄だけを対象とし、しかも株価の高い銘柄の影響が大きくなる計算方法です。株価の高い数銘柄が大きく上がれば、他の多くの銘柄が下がっていても日経平均は上がることがあります。市場全体の様子を知りたいときは、TOPIXや値上がり・値下がり銘柄数もあわせて見ます。
STEP 9
実践
税金とNISA ── 手取りを決める最後の関門
目安 2週間
このステップの到達点 ── 税引後の手取りを自分で計算でき、NISAの枠のしくみと使うときの注意点が説明できる。
株でもうけると、いくら税金がかかるか
株式の売却益(譲渡益)と配当には、合計20.315%の税金がかかります(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)。特定口座(源泉徴収あり)を使っていれば、証券会社が自動で差し引いてくれるので、基本的に確定申告は不要です。
税引後の手取り
# 1,000円で100株買い、1,400円で売った場合(課税口座)
売却額 = 1,400 × 100 = 140,000円
取得額 = 1,000 × 100 = 100,000円
利益 = 40,000円
税金 = 40,000 × 0.20315 = 8,126円
手取り = 40,000 - 8,126 = 31,874円
# 同じ取引を NISA口座 で行った場合
税金 = 0円
手取り = 40,000円 ← 差は 8,126円
計算結果課税口座の手取り 31,874円 / NISAの手取り 40,000円
利益が大きいほど、非課税の効果も大きくなる。
NISA ── 利益に税金がかからない制度
NISAは、国が用意した少額投資非課税制度です。2024年からの制度では、次のような枠組みになっています。
※ 制度の内容は法改正で変わることがあります。最新の内容は金融庁のNISA特設サイトなど公式の情報で確認してください。
NISAの見落としやすい弱点 NISA口座での損失は、他の口座の利益と相殺(損益通算)できませんし、翌年以降への繰越もできません。課税口座なら、100万円の利益と40万円の損失を相殺して60万円分だけに課税されますが、NISAの損は「なかったこと」になります。非課税は利益が出たときだけ効くと覚えておいてください。
確定申告をしたほうがよい場合
- 複数の証券会社で取引し、一方で利益・他方で損失が出たとき(損益通算のため)
- その年の損失を翌年以降3年間くり越すとき(繰越控除。申告を続ける必要があります)
ただし、申告することで合計所得が増え、扶養や社会保険料の判定に影響が出る場合があります。迷ったら、税務署や税理士に確認してください。このページの内容は一般的な説明であり、個別の税務の助言ではありません。
練習問題
課税口座で、A証券で30万円の利益、B証券で12万円の損失が出ました。(1)確定申告をしない場合と、する場合で、納める税金はいくら違いますか。
解答を見る
計算
申告しない = 300,000 × 0.20315 = 60,945円 が源泉徴収されたまま
申告する = (300,000 - 120,000) × 0.20315 = 36,567円
→ 差額 24,378円 が還付される
※ 実際の手続きや、申告による他制度への影響は、必ず公式情報でご確認ください。
STEP 10
実践
自分のルールを、買う前に文章で決める
目安 1〜2週間
このステップの到達点 ── 買う理由・売る条件・1銘柄の上限を、紙に書ける。感情ではなく、あらかじめ決めた条件で動ける状態になる。
なぜルールが必要か
株価が急に下がると、人は「もっと下がるかもしれない」と怖くなって売り、上がると「乗り遅れる」と焦って買います。この2つの感情が、初学者の損失のほとんどを作ります。相場が動いている最中に冷静な判断はできません。だから、何も起きていないうちに、条件を文章にしておくのです。
投資方針を1枚にまとめる
投資方針メモ(記入例)
【目的】 15年後の教育資金 / 目標 500万円
【期間】 15年(途中で使う予定はない)
【金額】 毎月 3万円。ボーナス月の増額はしない
【中身】 インデックス投信 80% / 個別株 20%
【1銘柄の上限】 投資総額の 10% まで
【買う理由】 その会社の何が強く、なぜ利益が続くと考えるかを3行で書く
【売る条件】
1. 買った理由が崩れたとき(例:主力事業の赤字が2期続いた)
2. 資金が必要になったとき
3. 1銘柄が全体の20%を超えたとき、超過分だけ売る
【やらないこと】
- 信用取引・レバレッジ商品
- SNSで見た銘柄をその日のうちに買う
- 下がったからという理由だけの買い増し
使い方買う前に印刷して、机の見えるところに貼る。
相場が荒れた日は、新しい判断をせず、この紙を読み返すだけにする。
「株価が下がったから売る」をルールにしない
短期売買では、決めた率だけ下がったら機械的に売る損切りが有効な場面があります。しかし長期の資産形成では、下落そのものは売る理由になりません。売るべきなのは、価格が下がったときではなく、買った理由が成り立たなくなったときです。この区別を、買う前にはっきりさせておいてください。
1銘柄の上限を決める
どれだけ自信があっても、1つの会社に資産の大半を置いてはいけません。会社の不正や事故は、外からは事前に見えないからです。「これが半分になっても生活と気持ちが壊れない金額か」を基準に上限を決めます。
下落は必ず来る、という前提 株式市場は、数年に一度は2〜3割、まれに5割近く下がります。これは異常事態ではなく、株式という資産の通常の振る舞いです。「下がったらどうしよう」ではなく「下がったときに何をするか」を先に決めておくほうが、はるかに実用的です。多くの場合、正解は「何もしない」です。
練習問題
「業績が良いと思って買った会社の株価が、2週間で15%下がった」とき、あなたのルールに照らして確認すべきことを2つ挙げてください。
解答を見る
- 買った理由が崩れたか ── 業績予想の下方修正や不祥事など、事業に関する新しい事実が出たのか。それとも市場全体が下げただけか。
- 金額が上限内か ── その銘柄が資産に占める割合が、決めた上限を超えていないか。
※ 「15%下がった」という事実そのものは、売る理由にも買い増す理由にもなりません。
STEP 11
実践
情報の集め方と、投資詐欺の見分け方
目安 1〜2週間
このステップの到達点 ── 一次情報(会社が自分で出した情報)にたどり着ける。そして、投資詐欺のパターンを言葉で説明できる。このステップは、利益を増やすためではなく、財産を失わないためのものです。
信頼できる順に情報を並べる
※ 上位ほど「会社が責任を持って出した数字」に近くなります。誰かの解釈を読む前に、元の数字を見る習慣をつけると、情報に振り回されにくくなります。
投資詐欺に共通する5つのサイン
近年、SNSやメッセージアプリを使った投資詐欺の被害が大きく増えています。手口は毎年新しくなりますが、中身の特徴はほとんど変わりません。次のどれか1つでも当てはまったら、それだけで関わらない理由になります。
- 「元本保証」「必ず儲かる」「月利◯%」 ── 元本保証で高い利回りを約束することは、そもそも法律で認められていません。この一言が出た時点で終わりです。
- 有名人・著名投資家の名前や写真を使っている ── 本人の許可なく使われている広告が大量に出回っています。
- SNSやLINEのグループに誘導される ── 「先生」「アシスタント」が登場し、少額の利益を先に出させて信用させる手口が典型です。
- 入金先が個人名義の口座や暗号資産のアドレス ── 正規の証券会社が個人口座に振り込ませることはありません。
- 出金しようとすると「税金」「手数料」を先に払えと言われる ── これは詐欺の最終段階です。追加で払ってもお金は戻りません。
相手が本物かどうかを確かめる手順
1. 業者名を控える(相手が名乗る正式名称)
2. 金融庁のサイトで「免許・許可・登録等を受けている
業者一覧」を検索し、その名前があるか確認する
→ 載っていなければ無登録業者。関わらない
3. 金融庁「金融サービス利用者相談室」や
消費者ホットライン「188」に相談する
4. 一度でも送金してしまったら、すぐ
警察相談専用電話「#9110」と振込先の金融機関に連絡する
大原則「今日中に決めないと枠が埋まる」と急がせる相手からは、必ず離れる。
本当に良い話なら、あなたに声はかからない。
身近な人からの誘いにも同じ基準を 詐欺は、友人・知人・SNSで親しくなった相手を通じて広がることが多い形です。誘ってきた人自身がだまされている場合もあります。相手が誰であっても、確認する手順は同じにしてください。人を疑うのではなく、手順を守るのだと考えると、断りやすくなります。
信用取引・レバレッジ商品について 手元資金以上の取引ができる信用取引や、値動きが数倍になる商品は、短期間で資金を失う可能性があります。初学者のうちは、これらを「まだ使わない」と決めておくのが安全です。使わないことで損をすることはありません。
練習問題
SNSで知り合った人から「私の投資グループでは月5%の利益を元本保証で出しています。まず10万円から試してみませんか」と誘われました。どこがおかしいか、3つ指摘してください。
解答を見る
- 元本保証と高利回りの両立 ── 制度上ありえない組み合わせで、これだけで詐欺と判断してよい。
- 月5%という水準 ── 年に直すと単純計算で60%、複利なら約80%。世界の著名な運用者でも継続できない水準です。
- SNS経由での勧誘 ── 登録業者が個人にSNSで直接勧誘することは通常ありません。金融庁の登録業者一覧で確認すべき場面です。
STEP 12
実践
少額で始めて、記録し、振り返る
目安 1〜3か月
このステップの到達点 ── 少額で実際に売買し、買った理由と結果を記録する習慣ができる。自分の判断のくせを、数字で確認できる。
最初は「金額を減らして、回数を確保する」
知識と実際の売買のあいだには、大きな差があります。自分のお金が減っていく画面を見たときに何を感じるかは、経験しないと分かりません。だからこそ、失っても生活に影響しない金額で始めます。単元未満株なら数千円から可能です。金額が小さければ、判断を間違えても学習費用の範囲に収まります。
売買記録をつける
記録のない経験は、記憶が都合よく書き換わるため、上達につながりません。買った瞬間に、理由を書いてください。後から書くと、必ず結果に合わせた作文になります。
売買記録(表計算ソフトで作る)
日付 | 銘柄 | 売買 | 株数 | 単価 | 金額 | 買った理由 | そのときの気分
-----+------+------+------+------+------+-----------+---------------
4/10 | ○○ | 買 | 10 | 1,200 | 12,000 | 主力製品のシェアが
| | | | | | 3年連続で上昇。
| | | | | | PER 12倍は同業比で低い | 落ち着いている
-----+------+------+------+------+------+-----------+---------------
6/02 | ○○ | 売 | 10 | 1,050 | 10,500 | 決算で主力製品の
| | | | | | 値下げ競争が明らかに
| | | | | | → 買った理由が崩れた | 悔しい
# 損益 = 10,500 - 12,000 = -1,500円(-12.5%)
# 学び = 同業比のPERだけを根拠にしていた。競争環境を見ていなかった
記録すべき3つ① 買った理由(事実と、自分の判断を分けて書く)
② そのときの気分(あせり・自信過剰は、後から見ると原因が見える)
③ 結果から得た学び(次に同じ判断をしないための1行)
3か月ごとに振り返る
- 勝ち負けの金額より、買った理由が正しかったかを見る。理由が正しくて損をすることも、間違っていて得をすることもあります。後者のほうが危険です。
- 売買の回数が増えていないか。回数が増えているときは、判断ではなく感情で動いている合図です。
- 資産に占める1銘柄の割合が、決めた上限を超えていないか。超えていれば、超えた分だけ調整します。
相場の「良いとき」に注意 上げ相場では、どんな買い方をしても利益が出ます。そこで身につくのは実力ではなく自信過剰です。うまくいっている時期こそ、記録を見返して「この判断は、たまたま当たっただけではないか」と点検してください。
練習問題
3か月の記録を見返したところ、「話題になっていたから」という理由で買った取引が5件あり、うち4件が損失でした。次の3か月で、投資方針メモ(STEP 10)にどんな1行を足しますか。
解答を見る
例:「話題性を理由に買わない。買う前に、決算短信の売上・営業利益を3期分書き出せない銘柄は買わない」
※ 「気をつける」ではなく、実行したかどうかを後から確認できる形で書くのがコツです。ルールは、守れたか判定できて初めてルールになります。
STEP 13
実践
長く続ける ── 複利・積立・資産配分
目安 一生
このステップの到達点 ── 複利の効果を自分で計算でき、積立と資産配分の意味が分かる。投資は当てる競技ではなく、続ける競技であると理解している。
複利 ── 利息が利息を生む
得た利益を使わずに再び投資に回すと、次の年はその分にも利益がつきます。これが複利です。期間が長いほど効果が大きく、増え方が加速します。
単利と複利のちがい(100万円 / 年5%)
# 単利(毎年5万円ずつ増える)
10年後 = 100万 + 5万 × 10 = 150万円
30年後 = 100万 + 5万 × 30 = 250万円
# 複利(利益も投資に回す)
10年後 = 100万 × 1.05^10 = 約163万円
30年後 = 100万 × 1.05^30 = 約432万円
# 差は 10年で13万円だが、30年では182万円になる
72の法則72 ÷ 年利(%) ≒ 資産が2倍になるまでの年数
年3% → 24年 年5% → 約14年 年7% → 約10年
※ 概算のための目安であり、将来の利回りを保証するものではありません。
積立とドルコスト平均法
毎月決まった金額を買い続けると、値段が高いときは少なく、安いときは多く買うことになり、平均の取得単価が下がりやすくなります。これをドルコスト平均法といいます。
毎月1万円ずつ買った場合
1月 株価 1,000円 → 10株
2月 株価 500円 → 20株
3月 株価 1,000円 → 10株
投資額 = 30,000円 / 取得株数 = 40株
平均取得単価 = 30,000 ÷ 40 = 750円
# もし毎月10株ずつ「株数」を決めて買っていたら
投資額 = 10,000 + 5,000 + 10,000 = 25,000円 / 30株
平均取得単価 = 25,000 ÷ 30 = 約833円 ← 高くなる
毎月3万円を20年間、年5%で運用できた場合
積立元本 = 3万円 × 12か月 × 20年 = 720万円
評価額(複利・毎月積立の概算) ....... 約1,232万円
増えた分 ............................. 約512万円
重要な注意年5%は「そうなる」という数字ではなく、計算のための仮定です。
市場は毎年同じ率で増えたりしません。20年の途中には、
資産が3割以上減っている時期が何度もある前提で考えてください。
ドルコスト平均法は万能ではない 価格が下がり続けたまま終わる資産では、平均取得単価を下げても損失は残ります。この方法が効くのは「長期的には成長する対象に、時間を分散して投資する」場合です。手法より先に、何に投資するかのほうが重要です。
資産配分(アセットアロケーション)
どの銘柄を選ぶかより、株式・債券・現金などにどんな割合で分けるかのほうが、長期の成績への影響が大きいと言われます。年齢・目的・耐えられる下落の大きさから、自分の割合を決めます。
- 使う時期が近いお金ほど、株式の割合を下げる(下落から回復する時間がないため)
- 年に1回、割合がずれていたら元に戻す(リバランス)。値上がりしたものを売り、値下がりしたものを買うことになるため、自然と「高く売って安く買う」形になります
iDeCo(個人型確定拠出年金) 老後資金のための制度で、掛金が全額所得控除になるなど税制上の利点があります。ただし原則60歳まで引き出せません。この「引き出せない」という制約は、老後資金としては長所ですが、生活資金としては大きな短所です。NISAとの使い分けは、いつ使うお金なのかで判断してください。
最後に 投資でいちばん多い失敗は、間違った銘柄を買うことではなく、怖くなって途中でやめることです。相場が荒れているときに何もしないでいられるかどうかは、知識より、最初に決めた金額とルールで決まります。STEP 0とSTEP 10に、いつでも戻ってきてください。
練習問題
(1)年利6%で運用できたとすると、資産が2倍になるのはおよそ何年後ですか。(2)毎月2万円を15年間積み立てたときの元本はいくらですか。
解答を見る
計算
(1) 72 ÷ 6 = 12年
(2) 2万円 × 12か月 × 15年 = 360万円
※ (1)はあくまで概算です。実際の利回りは毎年変動し、マイナスの年もあります。